第8話 美女たちからのお礼
それよりも、俺たちが連れて来た盗賊について色々と聞かれた。
盗賊については、俺に聞かれてもとにかく必死でよく覚えていなかったので、正直にそのことを話した。
ギルドの対応のほとんどをセブンさんがこなしていた。
こういうこまごましたことは、やはり奥さんには敵わないのか、イレブンさんは聞かれたことだけ正直に話している。
ギルド側は俺たちの説明だけでは消化不良のようではあったが、とにかくAランク依頼の出ていた盗賊の殲滅も済んでいるので、その処理を進めるようだ。
「彼らについてはAランク依頼が出ているが、君たちにはその資格がない。
だが、特例を認め依頼終了の扱いをしておこう。
当然、依頼のあった金額も全額支給する。
また、彼らの中の数人については懸賞金も出ているので、それも出るように手配しておこう。
しかし、こちらの方は少なくとも数日はかかる。
また、詮議の後になるが、彼らは犯罪奴隷として扱われるので、その売り上げも君たちのものになるが、こちらも懸賞金以上に時間がかかる。
奴隷については奴隷商に任せることになるが、フィットチーネ商店で構わないかな」
「ええ、全てフィットチーネさんにお任せすることで話が付いております」
その後も色々と言われていたが俺は全く覚えていない。
細かな金額がどうとか、分配はどうするとか、色々と言われていたが、全てお任せだ。
暫く応接で軟禁されたようなものだが、それも直に解放されて、暁の皆さんと合流した。
だが、俺にはもう一つ、ここでの仕事が残っている。
そう、冒険者登録をすることになっている。
あのイレブンさんと顔見知りの人が対応してくれると言うので、イレブンさんと一緒にカウンターの方に向かった。
一枚の書類に記入させられたが、大した内容は書く必要がなかった。
名前と年、それと犯罪歴を含む賞罰履歴、それに魔法の有無など。
これなどは隠しておいても良い事が多く、俺は名前と出身地、それに年齢を書いただけで登録してくれた。
どういう仕組みかは分からないが、俺には日本語に見えるがすべて現地語になっており、俺の書いた内容も同様に変換されていた。
これもいわゆるギフトという奴かもしれないが、正直これには感謝しかない。
暁さんの紹介と言うか身元を保証してくれたことにより、ギルドへの登録は簡単に済んだ。
冒険者ギルドについての説明も暁さんにでも聞いてくれと言った感じで、直ぐに解放されて、暁さんのメンバーと一緒にフィットチーネさんのお屋敷を訪ねた。
お屋敷では既に宴会の準備が整っており、俺たちが到着後、直ぐに宴会が始まった。
その席で俺はフィットチーネさんの奥さんとお子さんを紹介されたが、これが驚くほど美人だ。
世の中には、お金に勝るモテキは無いな。
勝手にお金持ちのフィットチーネさんに嫉妬したのを覚えている。
宴会も本当においしい食べ物をたくさんいただいて、楽しく過ごして、お開きになった。
暁さん達は宿へと、フィットチーネさんのお屋敷を後にしていく。
俺はこの時、今晩の宿を決めていないことを後悔していた。
どうしよう。
冒険者ギルドでも行けば紹介してくれるかな。
俺は冒険者ギルドに向かおうかと思っていたら、フィットチーネさんに呼び止められた。
「レイさん。
この町にいる限り、私どもにレイさんの面倒を見させてくださいな」
「え、ここまでして頂いているのに、なんだか……」
「お気になさらないでください。
レイさんは私の、ひいてはこの屋敷に住まうみんなの命の恩人なのです。
それに、助けたあの三人もレイさんにお礼をしたいと申しておりましたし、これからあの三人の元に向かいましょう」
そう言われて、俺はフィットチーネさんについて閑静な高級住宅が並ぶこの辺りを歩いて行った。
高級住宅地と比較的裕福な庶民が住まう街並みの境の辺りに、これまた立派な建物があった。
「ここは、以前私どもの店があった場所なんです。
自宅を改装して、奴隷商もあそこに移動しましたから、ここで連れて来た三人も加えて、ここに娼館を開くつもりです。
まだ準備中ですので、開店まではレイさんはこちらにお住い下さい」
「え、良いんですか」
「ええ、本当は自宅でレイさんを歓待したかったのですが、あの三人もおりますし、こちらの方がレイさんも気兼ねが無いのではと家内も申しておりましたから。
でも、自宅には顔を出してくださいね。
今度はゆっくりと夕食でもご一緒したいですね」
フィットチーネさんにそう言われながら店の中に入っていく。
「あ、ご主人様だ」
そう言って小さな子が奥に走り出していった。
「あの子はここで、禿などをしてもらうつもりで引き取った奴隷なのです。
まだ十分に教育ができていないので、不躾で申し訳ありません」
フィットチーネさんはそう言って俺に詫びて来た。
別に失礼だとは思っていないが、客商売をするにはちょっとねとも思わないでもない。
ほとんど時間を空けずに、前に助け、馬車の中で一緒に町まで来たあの三人が先ほどの小さな子と一緒に出て来た。
「やっといらしてくれたのですね、レイさん」
「お待ちしていたのですよ」
「もう、来ないかと心配しましたわ」
三人がそれぞれに俺を歓迎してくれているようだ。
「レイさんを御連れしたから、お前たちが後はよろしくな。
では、レイさん。
私はこれにて自宅に戻ります。
娼館のオープンまではもうしばらくかかりますから、レイさんはここをご自由にお使いください。
また、必ず自宅の方に訪ねてきてくださいね。
それではごゆっくりと」
そう言い残すとフィットチーネさんは戻っていった。
一人取り残された俺は、両脇にあの三人の美女がぴったりと寄り添い、奥に案内していく。
俺のモテキが来た~~~。
その晩は、あの絶世の美女三人にこれでもかというくらいの歓待を受けた。
腹上死ってこんな感じで起こるものなのかと正直初めて実感した時間を持てた。
しかし、これなら死んでも良いかなとすら思うほどなのだから、危ない。
太陽が黄色いと感じる朝を迎えたのには、正直感動すら覚えた。
俺は一生、こんな気持ちにならずに今世を終えるのかと覚悟していたから……あ、ある意味終えていたのだった。
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