第102話 一日目終了
テストの一日目が終了した。俺の方は手ごたえがある。
今日の夜も変わらず美咲が俺の部屋にいる。自己採点をしているようだ。優等生はこういうところが違う。
「ふぅ」
全部の採点が終わり一息つく。
「どうだった?」
俺に気づきすぐさま解答用紙をかくした。
「予定通りですね」
嬉しそうではない。思ったよりよくなかったのだろうか。
「明日も頑張るために紅茶用意しますね」
「ありがとう」
キッチンの方に行く。どこか俺に顔を隠しているような気がするな。この様子。触れないほうがいいのだろうな。
バリン!!
カップが割れる音がした。
「ごめんなさい」
素手で片付けようとする。
「いいから。お前は休んでろ」
カップを割るだけでなくそれを素手で片付けようとする。こんな注意のできていない美咲。自己採点だけでここまでこたえるものだろうか。
「大丈夫ですよ。この程度でケガしません」
「いいから!」
ついつよくいってしまった。美咲の奇麗な手を傷つける可能性があるものは避けないといけない。
「ごめんなさい」
ソファーに戻り下を向く。
「お前。ほんとはどうだったんだ?」
「予定通りですよ」
「何点予想だ?」
「…平均点よりは上です」
「それは当たり前だろ」
「別に私が何点でもいいじゃないですか。倫太郎君こそどうだったんですか?」
話をそらしはじめた。
「美咲のおかげで平均50点以上は確定だな」
「そう、ですか。おめでとうございます」
こんな落ち込んだ様子で明日に影響しなければよいのだが。
美咲に代わって紅茶を用意した。
「すいません私の仕事なのに」
「この程度俺でもできる馬鹿にするな」
「そうですね」
まったくあおってこない。なんで俺がそれを残念がっているのだ。いつもの調子を戻るためには何を言ってやればいいんだ。
「おいしいです。見直しました。さすがですね」
提携文かのように感想を言われる。ただただ喜びそうな言葉をいっているだけで表情は暗いまま。
「インスタントだからな」
「そうですね」
久しぶりに椎崎との会話が続かない。これは困ったな。
「私帰りますね」
この空気に限界を着たのか紅茶を急いで飲んで帰ろうとする。
「美咲」
「はい」
「明日もちゃんとやれよ。あいつらと違って俺はお前の点数で態度を変えない。この環境はこのままだ」
「ありがとうございます」
少しだけ笑顔を見せる。
部屋に戻るとプリントが一枚落ちていた。美咲の自己採点のしたプリントのようだ。いったいどれほど点数を落としたのだろうか。
プリントを表にすると。バツが多かった。70,いや60点ってところだろう。これはさすがに落ち込むわな。
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