第123話
木佐山との意見交換が終わり部屋に帰った。するとすでに美咲は料理を始めていた。
資料はもらった。木佐山がだいぶ動いてることも理解した。だが俺としは全く進展はない。美咲が俺の暴力沙汰に介入してきてるとも思えない。だがその後に記憶を消されていれば気づくわけはないか。だとしても俺が覚えているはずだ。
「何かお悩みですか?」
俺を気にかけてくる美咲。心配というよりは建前だろうけど。
「大したことじゃない」
「そうですか」
そう言えばまだ試したことなかったな。いいタイミングだし試してみるか。
「椎崎。今日は食べていくか?」
「あなたがそうして欲しいなら」
料理と食事については薫さんといっけんもあるから簡単に突破できそうだな。
「そうしてくれ。あともっと力抜いてくれ」
「抜いてます。極力表情を見せないよう心がけてますので」
生活については普段通りというわけか。ここはお願いする余地が生まれているな。
「お前って文化祭のときのこと覚えているか?」
「記憶はあります思い出せませんけど」
「どういう意味だ?」
「あなたも知っての通りです。わかりやすくいうと記憶に鍵がかかっている感じです。目の前に記憶があるのに鍵が開けられないから思い出せない」
表現がわかりやすい。やはり記憶操作はできても消すことはできないのか。やはり一種の洗脳のようなものだな。思い出せないように暗示をかけているような。
「その記憶思い出してみろ」
簡単な話この命令で記憶が復活するなら全て解決だ。そして、8月のことについても本人に直接言える。
「できてたらとっくの昔にやっています。そもそもさっきから命令してきてどういうことですか?私はそこまで許したつもりないです」
怒られた。記憶については薫さんもしっかりと固めているようだな。
「悪かったな。お前優しいからな色々と教えてくれると思ってさ」
「別に優しくないです。でもありがとうございます」
少し顔を赤くする。初めの食事の時もそうだったし美咲は感情を極力抑えているが褒められるのは嬉しいようだ。褒められてなれてないからだろうか。
「食べてください」
今日はカレーだ。100%間違いない。
「ありがとうな」
「早く食べてください。そうしたら帰るので」
忠実なのか不誠実なのかわからないな。
「毎日夕食作ってもらってありたいのだがお前って友達いないの?」
心の無い質問を投げかけてみた。
「いません。興味ないです。学校で絡んでくる人も点数稼ぎなもんでしょ。あ、でも1人ストーカーはいます。その人が友達に入るなら1人ですかね」
木佐山のことだな。あいつ中学かららしいしそこまで影響ないから放置されているのだろう。
「入らないだろ。つまりぼっちか」
「そうです」
少しは怒ってもいい会話なはずが表情ひとつ変えず簡単に受け入れてくる。
「嫌じゃないのか?」
「別に危害ないですし。非常識ですがそれでも私の家を探ろうとせず一定の距離を持ってますので常に監視されてる気がする程度ですかね」
普通は監視されてるのが嫌なんだよ。おひとよしなのか?
携帯が鳴った。名前を見たら妹の琴音からだった。俺は携帯をそのままテーブルに置いた。
「でないんですか?」
「食事済ませたら掛け直す」
「緊急の用事かもしれませんし私に気にせず出てください」
「しかたないか」
押し切ってもどうにもならんし仕方なく出ることにした。
「おひさ!元気?」
相変わらず元気だなこいつは。
「どうした?」
「言い忘れてたんだけど冬休みそっち泊まるからよろしく。美咲さんが勉強教えてくれるって」
「俺聞いてないぞ」
「今言っただからよろしく」
電話が切れた。俺ほとんど口開いてない。
「何かありました?」
「妹が冬休みに来る。お前に勉強を教わりたいんだと」
だが、その約束をしたのは記憶が消える前。妹のことを覚えていないこいつが付き合うとも思えない。
「冬休みの予定の勉強会ってそのことでしたか。わかりました。引き受けます」
「いいのか?」
「覚えてないとは言え約束を破るわけにはいきませんし。あなたの点数では力不足でしょ。それに知らない予定入ってるのは慣れてるのでや
ほんとに真面目だな美咲は。いままでも記憶が消える前の予定に苦労していたんだろうな。
「助かる」
「あの知ってたらいいんですが妹さんは私の部屋入ったことありますか?」
「入ったどころか泊まった」
「なら問題ないです」
あのぬいぐるみ屋敷はギャップがすごいもんな。普段はクールで清楚系。しかし実際ぬいぐるみに囲まれたふわふわ系の少女だからな。
「わかってると思うがその態度はやめてくれよ」
「安心してください。その時は上手く演じます」
「感情を抑えることを禁止。あとは自然体でいい」
「承知しました」
琴音が絡んでくるとなるとますます複雑になりそうだな。
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