第122話 夏と秋の結びつき
木佐山の作成した資料。それを見て俺と美咲の感情の浮き沈みがほとんど同じタイミングということがわかった。さらに俺が先に沈んでいると言うところまで木佐山は気づいていたのだ。こんなすごい資料を美咲でなく社会で使えたらすごく利益が出ると思えるくらいしっかりとした資料にかんしんしている。
そしてついに本題にたどり着いた。木佐山が俺を頼ろうとした一言。その意図はなんだったのかを。
「私は椎崎様よりあなたについて調べるよう命令を受けるよう依頼を受けていました。停学になった暴力事件その真相を調べるよう。すごくめんどくさかったです」
木佐山が次に見せてきたページは夏休み前後の話である。
「どうやって探った」
「噂ですよ」
だとしたらおかしい。誰にも話してない日付までしっかりと当たっている。さらに場所まで。
「本当のことを言え」
「ほんとに噂ですよ。全部の噂を聞いて実際にそのあたりのことを見てまわりました。椎崎様が噂をまとめてくれたのを調査しただけですけど。そしたらひとつだけ噂で聞いた外見とほぼ同じ既に使われていない倉庫を見つけたんです」
つまり木佐山は美咲からもらった噂をもとに真相に迫ろうとしていると言うことか。美咲が関わったと言うことは嘘情報も相当なものだったはずだ。
「なんでそこまで」
「椎崎様から最優先事項と言われていたので。そうでなければ椎崎様から目を離すような調査などしません」
改めて彼女の美咲の想う気持ちの凄さを感じる。
「だがこれと何が」
「私は夏休みは椎崎様を見つけてはストーカーをしてました。もちろん家知りませんしたまたま遭遇するしかないのですが」
そんな簡単にストーカーというワードを使えるのはお前だけだよ。
「なので全てが正確とは言えないのですが」
次のページは椎崎の夏休みの過ごし方を日ごとに書かれている。7割程度は斜線が入っている。つまり家を知らないのに3割くらい椎崎を見つけたのか普通にやばいだろ。
「その数少ないものに奇跡的に見つけたんです」
木佐山が指を刺したそこにはこう書いている。
3日 倉庫にはいる学生の目撃があった。
6日 倉庫で騒音で通報が入る。中にいる人たちは警察が来る前にいなくなった。
16日 暴力沙汰になる(おそらく草加倫太郎くんが絡んでいる)
他の日の出来事は知らんがはっきりしてるのは俺が巻き込まれたのは16日。間違っていない。
「そして私が見つけた椎崎様です」
2日 いつものぬいぐるみショップでうさぎのぬいぐるみを購入。
5日 ワニのぬいぐるみ購入
6日 椎崎様を発見する。尾行するも気付かれ
逃げられる。尾行が初めて失敗した。
どこか慌てた様子だった。何かあった
のだろうか
7日〜14日椎崎様はいつものぬいぐるみショップに一度も現れなかった。
15日 ショップには来たもののどこか悲しい目
をしていた。もふることなく帰宅
16日 あの人は椎崎さまなのだろう
17日 しばらく観察はやめよう。あの人は別人
確かに日にちは一致している。そしてぬいぐるみショップに常に張っていることがわかった。それだけで美咲に会えるってどんだけぬいぐるみ好きなんだよ。それにプライベートに介入しないと美咲から聞いたはずだが介入せずストーカーしてたのかこいつ。
「単純にたまたまだろ」
とはいえ、俺とは関係ない。あいつのことは知らなかったし。
「16日に何があったんですか」
しかし俺の発言を無視し質問してくる。
「なんでもいいだろ。たまたま歩いて見つけて喧嘩になったそれだけだ」
「本当ですか?」
木佐山の鋭い目が俺を見てくる。
「本当だそれ以外の何者でもない」
嘘ではない。
「喧嘩した相手は男でしたか?」
この質問の意図はなんだ。こいつは何を疑っている。
「知らん。リーダー的なやつは身長は低かった。あとはキツネのお面をつけていたな。ほかはボイチェン聞いてたしわかるわけないだろ」
「わかりました。ありがとうございます」
「で、これからどうすんだ。お前の予想を信じて俺の見方をするのか?」
「もう少し椎崎さまを調べます。資料はご自由にお使いください」
結局、木佐山が何を目的にしているのかわからない。美咲を思う気持ちは本物だろうし敵にはなることはないだろうな。とりあえずこの資料をしっかり目を通しておくか。すげー椎崎のプライベートの話になるからあまり見るのは躊躇するが。
「草加倫太郎は白か。やはり黒はあの人かな」
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