第158話 琴音の吸収力
「琴音さん起きてください。そろそろ再開しますよ」
勉強を始め休憩をしてから30分程度たった。琴音はその間ぐっすり眠っていた。
「う、うーん。おはよ。目覚めたよ。やろっか」
やる気はしっかり維持できているようで安心した。
再び席に着いた琴音は木元プリントを進めていく。あきらかにさっきよりも集中力が高まっていた。美咲はどこかで介入しようとするが琴音のやる気に口出しがうまくできていない。問題もしっかり正解しているため美咲は黙って座ることしかできずにいた。
「あの。そこ」
「え?」
とっさに美咲が止めに入った。
「そこまだ教えてないです」
どうやらまだ琴音に教えていない問題を見つけたようだ。
「え、でもこれって。この問題と同じ公式を使って…」
さらに問題を進めていく。美咲はただそれを見つめていた。何か見つかれば教えるだろう。
「それで。こうやって」
かなりゆっくりと問題を解いているとはいえこの成長はすごすぎる。さっきまで数学なんて全くできなかったはずなのにもう自分のものにしている。それに問題を解いてるときチャンレジャーみたいですごく楽しそうだ。
「どうですか?」
美咲にプリントを渡す。プリントをみて彼女は驚いていた。
「そうですね。おしいです。ここはですね」
琴音の描いた途中式の中で間違った部分に線を引き始める。そして正しい式を書きながら説明をしている。その説明を真剣なまなざしで聞いている。まさか琴音が机の上でここまで真面目になるとは。正直感動している。
「あ、ほんとだ。おしぃー」
「でもここまで出来たら十分ですよ。ちゃんと勉強したことをいかせてますね」
ずっと怒っていた美咲だったが琴音の頑張りを褒め笑顔になった。
「ありがとうございます!!よーしじゃんじゃん進めますね」
琴音が熱中していると美咲が飽きてたのか俺に近づいてきた。
「彼女天才ですか?」
「俺も知らなかった」
「私いります?」
今の光景を見たらそうなっても無理がない。教えていたはずなのに完全に蚊帳の外になっている。
「お前がきっかけ作ってくれたんだろ。ありがとうな」
「このペースなら結構間に合う気がしてきました。このままいければ」
美咲も力が抜けれたようだ。初日の成果は美咲の気持ちにも余裕を生むことができたようだ。
「すいません。彼女の手が止まったら教えてもらえますか?」
椅子に座ると下を向いて眠ろうとする。
「ここ最近。これ作ってたので。早起きしすぎていました」
あんなに朝早かったのはそのせいだったのか。おそらく夜も進めていたのだろう。ほんと美咲には感謝しかないな。
そこからも琴音は止まることをしらずひたすら書き進めていた。最初はごるの見えない壁であったプリントもゴールのめどが見え始めてきていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます