第120話 木佐山のデータ
朝からずっと、集中できずにいる。木佐山との朝の出来事のせいだ。早くあいつから情報をもらいたいと思ってしまう。彼女が何かを知っているのはほぼ確実である。今の状況を考えたら頼るしかない。なんでもいい、美咲の手がかりを引き出さないと。
「りんくんまた機嫌悪そうだけど大丈夫?」
双葉に心配される。
「あ、あー問題ない」
「ならいいけど…」
常に惨敗の目があるのが今の俺の不利なところだな。負の気持ちになれば双葉に心配されてしまう。気をつけないと無理やり保健室に連れて行かれるかもしれない。流石に大和介入してきたら勝ち目ないし。
「双葉今日なんだけど少し用があるから先帰ってくれ」
「いいけど、無理しないよね?」
「先生に呼ばれてるだけだ」
「ならいいけど」
放課後をようやく迎えた。木佐山から空き教室それも誰も来ないような端の方にある場所を指定してきた。急いでその場に向かう。彼女がまだ教室にいたし急いだところで話が進むわけではないが体が自然と動いている。
いつもは鍵がかかっている空き教室だがすでに開いていた。中に入っても誰もいない。とりあえずカバンを置いて彼女を待つことにした。
「お待たせしました」
少しすると彼女が現れる。
「きたか」
カバンを置くとホチキスで止められた分厚い資料を渡してきた。
「なにこれ」
「椎崎様の記録です。私の見える範囲ですが」
2ページ目の目次を見ると歴代テスト記録や体力テストの結果、登校時間、下校時間など細分化されているのがわかった。ただのストーカーだろこれは。
「で、なんでこれを?」
「椎崎様に溺愛した私は隠れてこれを作ってました。一分一秒できる限りあの人を観察して細かい部分までメモを取って」
ほんとにストーカーじゃないか。恐るべし。
「よくもまぁここまでまとめて本人にバレないな」
「理由は分かりませんが公認ですから。本人の」
「なるほど」
椎崎がこれを記録することを許すか…
「そんなわけないだろ」
普通に考えてメモ程度なら許すかもしれないがこんな犯罪予備軍みたいな行為をあいつが許すわけない。
「ほんとです。本人も何度か目を通してますし」
信じがたいことだがここで嘘をつく意味もわからない。
「わかった一応信じておく。それで何を見ればいい?」
「ここからは予想の話ですが、あなたは椎崎様の変化に気づいた。というより椎崎様の変化のトリガーになったと思ってます」
ページをめくっていく。そして今月の変化をまとめた資料だ。それも俺のことまで書いている。いったい木佐山はどこまで把握してるんだ
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