交差する関係編

第119話

 目が覚めてまた学校に行く日がやってくる。何も変わらない1日だ。

 普段通りの時間にアパートの部屋を出る。

「おはようございます」

 ちょうど美咲も登校する時間だったらしく挨拶をしてきた。

「おはよ」

 俺たちは特に会話をすることもない。他の人に一緒にいるところを見られないように美咲を先にいかせる。

 美咲がある程度進んでくから俺もアパートを出ていく。俺と今の美咲の関係はこんなものだ。ただ、初めて会った夏休み明けとは少し違っている。阿吽の呼吸など俺たちにはできなかった。美咲は無意識だろうが俺の動きを少しは予知している気がする。登校であれば「俺が先に行かせるだろうから自分が先に学校に向かう」のように。

「りんくんおはよ!」

 歩いていれば双葉と合流をする。

「あれ?りんくん元気になった?」

 双葉は俺の変化に気づいたようだ。よく見ているものだ。

「普通だろ」

「うーんなんというか落ち込んでないというか」

 だとしたら美咲の現実を知ることができたからだろう。美咲を助ける手立ては見つかったしな。

「テストも終わったしもう冬休みだろ」

「なるほどそれは嬉しいね。冬休みもどこかでかけよ」

「わかった」

 まだテストのお礼をちゃんとできてないし冬休みは双葉に付き合おうことにするか。


 教室につき席に座る。

「椎崎さん元気に戻ってよかったな」

「そうだね」

 廊下の方から声が聞こえてくる。美咲のテストが悪く落ち込んでいた時期が終わりいつも通りの美咲に戻ったようだな。

「少しいいですか?」

 頭を下げほぼ寝てる状態の俺に木佐山が声をかけてくる。彼女がいずれ俺に声をかけてくることは予想できている。こいつが美咲の変化に気づかないわけがないからな。

「めんどくさい」

 だが、まだ美咲と俺の関係は予想でしかない。ここでひょこひょこ話を聞きに行けば木佐山の予想が正しいと言っているようなものだ。

「そうですか。あなたもわからないようですね。ならいいです」

 今の一言で何を理解したんだあいつ。

「なら、一言だけ。あなたがあの人を元に戻すと信じています」

 自分の席に戻って行った。

 元に戻す。少し引っかかる。昔からあいつは無愛想なやつだろ。今変わったとしてもそれはみんなの知る椎崎美咲だ。

「放課後。少し時間をくれ」

「承知しました」

 木佐山も何かを知っている。あいつが椎崎に尽くす理由はそれにきっとつながっている。使える見方は使う。敵であろうと味方であろうと。俺がそいつから裏切られたとしても俺は美咲を取り返す。

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