第85話 何もない日常が戻りだす
「おはようございます」
「おう」
実行委員でのできごと。そして椎崎姉からの婚約候補という発言(こっちに関しては俺だけだが)で大きく変わった気がする。
文化祭に近くなるにつれて俺も椎崎も忙しくなっていた。相変わらず椎崎は頼られていた。俺の言ってることをしっかり聞いてくれたからか可能な範囲で手助けをするようになった。
「りんたろうっち運ぶの手伝ってー」
「まったく」
そして俺も大和たちの手伝いをするようになった。人手がギリ足りてない状況で担当の仕事だけでなく適材適所のひとが手伝って効率化をはかっている段階。
「倫太郎もここ最近で変わったよな。最初はあんなに仕事をしたくないといっていたのに」
「いいだろ別に」
少しでも椎崎から離れるきっかけが欲しいのが一番の理由だ。きっと椎崎も同じな気がする。
ここ最近は俺も遅くまで学校に残るようになったこれも同じ理由。
「おかえりなさいご飯できてますよ」
椎崎が先に帰っていれば部屋には夕食が並んでいた。
「…」
だがその場には会話がまったくない。ただ二人がここで食事を済ませているようだ。おいしいのには変わりないが食事の楽しみがなくなった。
食事が終われば流れるように食器を洗いに行く椎崎。この間にも会話は一切ない。俺はただスマホを触っているだけ。
「帰りますね」
そして食器が洗い終わればそのまま自分の部屋に戻っていく。これが俺たちの一日だ。会う時間も一緒にいる時間も大きな変化はない。だが、明らかに俺たちに溝ができた。
いままでがおかしかったのかもしれない。何も知らず互いの気持ちも伝えずただ一緒にいたから何もなく過ごしてきた。だが互いに互いに対して興味を持つようになってきた。これが一番の問題である。今思えばあの場で恋愛話をするのは余計だった。あの状況であの話をしてましてや婚約候補を知らない奴に対して話すと好意を持たれていると思われるだろう。
普段の状態に戻ったそう思えばいい。食事を抜いて俺らの関係は元に戻った。このまま流れで夕食を作ることもなくなるだろう。これで俺たちの関係は終わる。椎崎姉には悪いが今のこの状況回復させるのは正直難しいだろう。少なくとも俺には回復のために動くことはない。
ほんとに楽しい時間だった。このまま続けばもっと楽しかったのだろう。人間関係が不器用なおれがしゃしゃり出たのが悪い。高校は言って約半年で同じ過ちを二回もするとはな。あの時だってそうさ。下手に介入して暴力沙汰になって。誰も救えず俺が不幸になっただけ。ほんとに無意味だった。俺の人生は無意味なことばかりだ。
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