第84話 目線転換

 一応仲直りをしたはずだ。椎崎は正常に戻っている。

「・・・」

 なのになぜか距離感は回復していない。どこかもやもやしている。

 ソファーには隣通しで座っているが互いに逆を向いてスマホをいじっている。

「倫太郎君何か話題出してください」

「思い浮かばない」

 話題作りに困っている。無理もないだろう。もともとそこまでちゃんとした会話をしていたわけでもないし。一日しかまが空いてないから今までなにしてたのような話も盛り上がるわけがない。

「明日からはちゃんと来てくれますか?」

「お前が帰れって言っただけだけどな」

「ごめんなさい」

 一発で話題を遮断してしまった。言葉選びを結構気にしているときにマイナスにとらえられる発言はひかえないとだな。

「さぼったぶん仕事はしっかりやる」

「そうですか。ありがとうございます」

 感謝されてしまった。まずい会話が続かない。

「お前って彼氏作るたいとか思ないのか?」

 婚約者候補といわれてしまったことで変な質問をしてしまった。

「彼氏ですか。いてもいいと思いますけど…この関係壊れそうなので嫌ですね」

 つまり、俺にみゃくがあるととらえてよいだろうか。そうなると付き合って結婚することはだいぶ近づくことになるな。つまり俺の人生きまりつつあるのか。

「大和に興味ないって前言ってたしな」

「あの人は付き合ったらめんどくさそうです」

 だいぶばっさいりといってきたな。

「倫太郎君こそどうなんですか?クラスでいつもいる人と付き合いたいとか」

 双葉とはそういう関係を考えたことないな。まだ友達ってかんじしかしない。

「双葉はないな」

「そうですか?結構楽しそうですけど」

「それならお前もそうだろ」

「え、え、えー!!」 

 顔を赤くしてきた。

「あ、あのわ、私」

 ものすごく動揺している。

「いったおちつけ。その関係に近づいたら多分隣に座れないわ」

「そうですよね」

 今の反応もいやじゃなさそうだな。ダメだ考えるな。変に考えたら絶対悪い方向に変わっていく。

「彼女できたらちゃんと教えてくださいね。絶対嫉妬されますので」

「できたらな」

「楽しみです。倫太郎君が彼女できるとこ見るの」

 俺は彼女通り越してあなたの婚約者候補になってるんだよ。君のお姉さんにそうさせられているんだよ。あなたが築かないところでは俺らが結婚しそうになってるんですよ。

「そろそろ帰りますね。明日もあるので」

 沈黙が長かった気がするがだいぶ時間が立っていた。

「わかった。また明日な」

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