第179話 薫さんとの再会

 琴音の勉強は割と順調に進んでいる。美咲の教えて彼女のやる気が相まって効率も上がっている。勉強中は集中しているときは獲物を狩りするような鋭い目つきになる。正直怖いくらいだ。緊張感がすごい状況になるが、力を抜けばただのかわいい妹になる。今の彼女はものすごくかっこよく見え、努力が実ってほしいと強く願う。


 そして27日になってしまった。薫さんと久しぶりに会う日だ。それも二人きりらしい。美咲に連絡がきている。もうアパートの前でまっているようだ。

「今日もがんばれよ」

 琴音に激励を送る。その一言で琴音は笑顔を見せてきた。

「もちのろんだよ。お兄ちゃんも楽しんできてね」

 友達と遊びに行くことにしているため琴音からしたら楽しそうとなるのだろう。だが、実際は戦場にいくようなものだ。

「がんばってくださいね」

 薫さんのことをよくわかっている美咲からはかなり心配している表情が見える。無駄な心配ではある。もうあの人と話すことは慣れている。薫さんのペースになったときにどう自分を保つのかが重要だ。

「ま、楽しんでくるわ」

 いまは心配させないように気持ちだけは楽しみしておくことにする。


 外に出るとどの車よりも目立つ赤い外車が見える。確実にあの人の車だろう。

 階段をおりるごとに徐々に緊張してきた。そもそも何用なのかはわからない。美咲のことであるのだろうけど別の案件だったとしたら争うのも難しくなる。今日はなんとしてでも美咲の話にもっていき説得を試みるようにしないと。

「お、きたきた」

 ドアを開け声をかけてくる。いつも通りスタイル抜群コーデもよくすごくきれいだ。

「お久しぶりです」

 軽く頭を下げ挨拶をする。

「久しぶり。元気そうだね」

 いつもどおり余裕な態度をとってきている。

「あって早々でわるいんですけどまわりくどいめんどいので要件を聞いてもいいですか」

 薫さんなら要件を完璧なタイミングで話してくるだろう。そうなれば俺は圧倒的に不利なる。俺の有利なタイミングを作れる保証はない。だからふらっとである今の時点で話をふるのがベストなのである。

「あれ、じゃなくて美咲ちゃんから聞いてないの?ただでかけるのに相手が欲しかっただけだけど」

 きょとんした顔をしてくる。

「本当ですか?」

 俺がこのタイミングで質問してくるのもよんで準備していた可能性もある。ここでひくわけにはいかない。

「そんな怖い顔しないでよ。今日は美咲ちゃんとは別件。あなたをただ見たいだけ。そんなに疑うなら約束しようか」

 嘘をついているようには思えない。この人は本当に俺を見に来たのだろうか。

「約束って?」

「もし私が美咲ちゃんのことを妹以外の視点で話したら君の勝ち。記憶操作も開放するしこれ以上追及はしない。言葉で信用できないなら契約書も作るよ」

 契約書を書こうとしてまで美咲のこととは別件といいたいようだ今日はやはり美咲の件は関係ないようだ。だが。

「あの件についての話をしないにしてください」

 薫さんにとって妹の扱い=今の美咲の扱いだと思う。つまりどんなにひどい状況であろうと妹以外の視点で美咲をみることはない。

「ちゃーんと理解しているようだね。了解。でも、細かいチャックとか指摘はやめてよ。純粋に君と楽しみたいんだから」

「わかりました」

 疑いが晴れたわけではないが今日のこの人はやはりどこか違うようだ。疑うことは忘れないが少し気を抜いて話すことができそうだ。

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