第15話 二つの距離感

「椎崎さん。今日はお弁当ですか?」

「いえ、今日は食堂に行こうと思ってます」

 学校生活に戻れば俺と椎崎は今まで通りの距離感になる。まるで二人で出掛けたのが夢だったように。俺たちの距離感はこれでよいのである。ほんの少しの確率で俺らが交わる程度でいいのである。

「倫太郎くん!!お昼いこ!!」

 双葉が声をかけてくる。彼女は完全に俺意外とは仲良くしようとしない。俺といる時点で周りの目が変わったこともあるがどちらかという偏見で判断する人とは仲良くしたくないらしい。

「わかった」

「やったー!」

 ものすごくうれしそうにする双葉。

 立ち上がり食堂のほうにむかっていく。

「今日はラーメンにしようかな。倫太郎君は?」

「カレー」

「またカレー?ホント好きだね」

 まだ数回しか一緒に食べに行ったことはないし普段はそこまでカレーを食べるわけではない。タイミングの問題だ。

「椎崎さんは何を食べるんですか?」

 集団が食堂に入ってくる。椎崎を中心とした取り巻き立ち。

「あ、」

 俺らに気づいたようだ。

「椎崎さん別のとこどうですか?」

 速攻で場所の変更を提案する取り巻き。

「大丈夫ですよ。彼だってこんなところで暴れたりしないので。そうだ。良ければ一緒にどうですか?双葉さんともお話ししたいですし」

 椎崎がこの場をかき回し始める。

「いえ、私は倫太郎君と食べますのでおかまいなく」

 提案をすぐに否定で返す双葉。

「おい!転校生。せっかく椎崎さんが声かけてくれてるんだぞ!」

 取り巻きが怒りだす。

「この場で暴れるのは果たしてどっちなんだろうねぇー」

 さらにあおりで返す。ちょっとまずいかもな。

「わかりました。すいません。今日はお二方と食事しますので皆さんは別席でお願いします」

 さらに椎崎は対応してくる。一瞬にして双葉が俺らをみるほかの連中へ敵意を向けていることに気づいたようだ。

「おい。お前椎崎さんに何かしたらただじゃおかねーぞ」

 捨て台詞を残しいなくなる取り巻き立ち。ずっと俺らに文句を言ってることが聞こえる。 

 悪いが椎崎そんなことをするようなやばいやつではない。

「これで問題ないですね」

「何がしたいんですか?」

「あなたのことをわからないのでお話ししようと思っただけです。それ以外の理由はありません」

「ま、椎崎さんは何とも思ってなさそうですしいいですよ。倫太郎君も問題ないよね?」

 常に上から目線の双葉と椎崎。こいつら仲良くはできなさそうだがタイプはものすごく似てそうだな。

「別にいいぞ」

「ありがとうございます。草加くんって優しい方なんですね」

 初対面風に見せるのもうまいなこいつ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る