第14話 契約
ベンチに座り三十分くらいがたっただろうか。
「よし!回復しました次行きますか!!」
休憩を終え立ち上がる椎崎。しかし足は震え目は泳いでいる。息遣いからしてもまだ回復したってきがしない。
「はぁ。無理しすぎだっての。帰るぞ」
これいじょう体負担を与えたら体調を壊しかねないため、無理にでも連れて帰ることを決めた。
「座ってゆったりできるとこだけでいいので。お願いします」
深く頭を下げてくる。返答に困ってしまう。本来なら今すぐに帰してやりたいが、シンプルにこういうシチュエーションに俺は弱い。今にも涙を浮かべそうな彼女の前に即答できずにいる。
「無理に連れて帰るなら私叫びますよ。同じクラスの人がいたらどうなりますかね」
頭を下げたまま不敵な笑みを見せる。こいつがぶっ倒れて連れて帰るのと叫ばれた他人を巻き込むのか…。明らかに前者の方が面倒はおきないか。
「つぎ倒れた帰るからな」
「…ありがとうございます。こっち行きましょうか」
手を引っ張るが元気はなくまっすぐ歩くこともない。いつもの性格の悪い部分を出してきたが相当無理をしている。俺なんかとここまで一緒にいる意味があるのだろうか。
「どこ行く予定ですか?」
「ドリームアイランドっていう人形を見て回るものです。そこは涼しいですし二人きりになれます。それに人も多くないし怖くないです」
事細かく説明をしてくる。
「そうですか」
「倫太郎君もきっと楽しんでくれると思います。私のおすすめなので」
外見の疲れ具合と話す量が全く違う。ほんとに疲れているのかも疑ってしまう。
ドリームアイランドの近くついた。また長蛇の列ができていた。休日は人気アトラクションは列が多い。
「また並ぶか」
「いえ、ファストパスあるので行きますよ。さっきのと違って覚悟いらないのでとってありました」
スマホを俺に見せてくる。時間もぴったりだった。こいつは預言者なのだろうか。悪女でなくて魔女だなこいつ。
そして無事並ぶことなくすぐに中に入ることができた。
そしてトロッコに乗る。
「いきますよ!」
声に力が入っていないが無理にテンションを上げようとしていることが伝わってくる。
「倫太郎くんあそこです!」
ジャングルを彷彿させるエリアに入った。そこには動物のミニチュアがならびツタにぶら下がる人形がいたりする。
「どこだよ」
「ほらあそこです!」
ドリームコンクール受賞作品という看板が見えた。このエリアを考案した人らしい。名前は椎崎美咲か。…
「椎崎!」
「そういうことです。これは私が考案して受賞をいただいたんです!今日初めてなんですよね。倫太郎君と一緒に見れてよかったです」
俺にこれをみせ自慢したいがために無理をしてでも訪れたというか。
「スゲー想像力だな。全く違和感ない」
「やっぱり」
感想を述べると笑みを見せてくる。何かを言った気がするが聞き取れ話なかった。
「ありがとうございます。これでまた休めます」
俺の肩に頭をのせてくる。自然と心拍数が上がってくる。二人きりでこの空気は意識せずにはいられない。
「まったく。またいつでも付き合ってやるからこれ終わったら帰るぞ」
「はい」
椎崎美咲についていろいろと謎が多くなった。だが、好きな場所でみせる純粋な姿は魅力的であると思える。こういうことされたら勘違いすると思えるが、普段が無すぎてなにも思えない。明日からはどう接するのが正解なのかと模索するか。こいつが望むなら悪くないし…
「これでご主人様の命令も守れたかな」
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