第16話 距離感の争い
「あの近すきです!離れてください!」
「あなたこそなれなれしく近づいてるではないですか」
ここは食堂。双葉と昼飯を食べに着た俺。そこに椎崎が乱入。急遽、俺、双葉、椎崎の三人で食事をすることとなった。そして二人は席について言い争をしている。
「私はいいんです。あなたには権利がありません」
たかが席の距離感でなぜこういい争いを繰り広げれるのだ。
「私だってみんなと仲良くしようとしてるだけですので問題ないです」
「とにかくもう少し離れてください」
「当の本人はどう思います?」
そう。これは二人が近づいてるのではなく、なぜか俺を真ん中にして距離を詰めてきたのだ。なぜか2-2で座る四人席で左右に二人が入ろうとしている。そのおかげでものすごく狭い。
「とにかく一人は前の席にいけ。なんなら俺がそっちにいく」
いま問題となっているのは俺の隣にいることである。俺が一人になれば一発で解決である。
「それいいアイデア!」
「といいつつ草加くんの隣にまたいくつもりですよね」
椎崎が指摘をする。
「でもこのままだとお昼終わってしまいますよ」
「…それは否定できません」
「ということで」
お盆を持ち逆側の席に座る。
「じゃぁ私が左でいいんで」
「私が左でしょ!」
しかしこれで論争が解決したわけでなかった。今度は俺の前にどっちが座るかだ。
「え、と。めんどいから双葉俺の前で」
「やったー!」
「ま、草加君がそういうなら仕方ないですね」
俺の二言ですぐに解決をした。
「さ、食事にしますか」
「そうだね」
さっきまで言い争いをしていたのが嘘かのように自然と普通になった二人。まじで俺はなんのために二人を待っていたのだろうか。
「ところで双葉さんってなんでこの時期に転入したんですか?一年の夏にこちらに来るのってすごく珍しい気がするのですが」
双葉の手が止まり目がおよぎだす。
「え、とその」
焦りが見えている。というより、恐怖って感じか。
「ごめんなさい。思い出したくないこともありますよね」
「う、ううん。大丈夫」
無理して笑顔を見せる。
「なるほど」
椎崎は特に情報がないなかであるが理解をしていたようだ。
「それよりさ椎崎さんってすごい人気だよね。何をしたらあんなにみんなが一緒に動くようになったの?」
「私かわいいですからね。それに成績優秀。それだけです」
特に自慢するわけでもなくそれが自然の原理だといってるようないかただな。
自分でかわいいとかいうのか。こいつの自画自賛っぷりには感服だ。
「でも、他人より離れた存在って嫉妬されない?私だって話すのも怖いな」
「あなたはこうして私と話せてます。だから仲良くできますよ」
手を差し出す椎崎。
「ごめん。あなたと仲良くする気はないから」
その言葉には冷徹さを感じ取れた。
「そうですか。なら私はあなたにかまう必要もなさそうですね。私はこれで」
まだ食べ終わっていないおぼんを持ち別の席に離れていく。
「よかったのか?」
俺の質問に対し笑顔をみせる。
「私は倫太郎君が仲良くしてくれれば十分ですので」
「おま」
なぜそこまで俺にかまうのかと質問をしようとしたが、どこかそれを聞いてはいけないと感じていた。
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