第34話 恐怖にあらがうもの
「次右足」
「はい」
右足を抜き横に進む。
今は蜘蛛の巣すといわれる網状につながった縄をつかんで進む場所にいる。なるべく下をみないことで高さへの恐怖をやわらげながら進んでいる。意識が高所への対策に向いてしまっているせいで次どの足や手を動かせばいいか見えずにいる。特に足の方は下を見ない関係でちゃんと見守っていないと滑らせて落ちそうで気が気でない。
「あと少しですね」
「そうだな」
ペースは遅いものの少しづつ慣れてはきているようだ。
「あの足が」
ゴールは目の前。ゴールの平らな部分に片足を置く。しかしそこからどうやってもう片方の足を置けばいいのかわからずにいる。下を見れば行けるだろうが。
「そのまま右足置いて両手を外せ。落ちそうになったら」
「わかりました」
俺の指示通り軽々と渡ることに成功する。
「お疲れ。一息つくか?」
「あの、私の体育の成績わかります?体力と高所を抜けば平均より上なんですよ。少し舐めすぎでないですか?」
成績対象となるものに長距離走はあっても高所は全く関係ない。しかも球技が中心になるため椎崎の成績はほかに劣らず上位。それは知っている。
「その高所がお前を一気に削るんだろうが。次からも橋が続くんだからな」
「今のペースでも琴音さんに追いつく気がしません。ひとまずあの網の中のところまではそのまま進みます」
網で囲まれた休憩スペースのほうをさす。
「わかった」
ハの字で並んだ橋。さっきまでの水平と違いバランスをとるのも難しそうだ。
「…」
目の前にくると再びおどおどし始める。一歩足を置こうとするが揺れてしまい足をもとに戻す。
「あの落ちそうになったら支えるって約束してくれますか?」
「場合によるがなるべく」
「わかりました」
大きく息を吸い軽く息を吐く。
「行きます」
一歩足を入れる。命綱ようにつながっている紐しっかり握りながら進む。揺れてるときは紐を強く握り落ち着くと一歩進む。さっきまでが嘘かのように順調に進んでいる。
「あのあとどれくらいですか?」
「半分くらい」
ぱっと見でならわかるだろうになぜ俺に聞いてくる。
「ありがとうございます」
そしてさらに進んでいく。
特に心配することもなくゴールまで進んだ。
「これで終わりですか?」
「おう」
「開けます」
開ける?
「私こんなに進んでたんですね」
いったい何をいってるのだろうか。
「お前どうやって進んだんだ?」
「怖いし揺れるで多分進めそうにないので目つむりました」
「えーと。目を」
さっき俺に支えることを再確認したのは目をつむるから踏む外す可能性が高いからだったのか。
「さ、次進みますよ」
恐怖には勝てないくせにすげー根性もってんなこいつ。見えなければ怖いものはないってか。
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