第2話 隣の家には優等生が

 今日知った新事実。俺の隣の部屋に暮らす人は学年1の人気者である新崎美咲だった。

「なんでお前が」

 さっき「お隣」という発言からももう理解はできているはずだが問いかけていた。

「あなたの部屋のお隣だからですけど何か問題ありますか?」

 彼女にして彼女であらずという感じがする。学校では表情が豊かな彼女だが目の前にいる人はまるで感情がないかのように見える。

「気づいていたのか?」

「知りませんよ。お隣の人とは明らかに生活リズム違ったので」

「だ、だよな」

「それでは」

 立ち去ろうとする彼女。引きづっていたのはエコバックだった。中には2Lの水など重そうなものばかり。

「手伝うって」

「だいじょうぶです。この程度」

「はぁ」

 彼女の言葉を無視してエコバックに手をかける。

「だからいいですって」

 怒っているようだが完全に見下されている。

「単純にうるさい。お前のためなんかでない。勘違いするな」

 そう簡単に折れない性格なため思考を変えてみる。外がうるさくて外に出たのがきっかけだったわけだし間違ってはいない。

「…」

 その薄い感情の中でも感じ取れるほど悔しがっている様子がうかがえる。

 なんで悔しがるんだよ。

「初めてあってなんだがめずらしいな」

 初対面であるとはいえ、もし過去にも同じようなことをすれば気づいていただろう。だが俺は気づかなかったなら、今まではそうしてこなかったと考えてもおかしくないだろう。

「たまたまです。二週くらいお出かけで忙しくて買い物行く余裕なかったので、いろんなもの切らしてしまっただけです」

「人気者は大変ですね」

「大変ですよ。あなたみたいな人とは違って」

 完全に嫌みだろそれ。誰にでも優しいってのはうそかよ。

「俺みたいな嫌われ者は誰も相手にされないからな予定が空きまくりで楽だぜ」

 思いっきり見栄を張った。こいつには事実であっても負けたくないって気持ちが出てきている。

「他人を下に見ることでしか自分をアピールできないような人と同じにするのはやめてください。私が言いたいのは事実を捻じ曲げられたのに否定をしないあなたにいってるんです」

 足が止まった。鳥肌がすごかった。ほかの連中と全く違うのはあきらかだ。

「否定したところで誰も聞かない」

「否定をやめれば嘘は事実となる。今はもうあなたの印象が悪に根付いたのでいまさら何をしても変わることはないです」

 ド正論をぶつけてきた。彼女の考えは間違っていない。俺は今のことを受けれいているから。

「そもそも俺ら絡んだことないだろ」

 とはいえ、関係は学年が同じ程度。授業や行事で一緒になったことがない。

「単純です。あなたが、そうしない人だから」

「いや、だからさ」

「入学式の時、迷ってる同級生を教室まで連れて行った。体育祭の時に体調崩しそうな生徒をすぐに救護班のところに連れて行った。それに…」

 それから俺のエピソードをいくつか話していった。そのすべてが事実であった。その場にいたわけでもないはずの彼女がすべてを把握していた。

 驚きで言葉がでてこない。

「なんでそこまで知ってるかって思いますか?それほどあなたは人気だったんですよ。健太郎君に助けられたって耳にすることが多かっただけです。そしてあの事件以来みんな揃って まさか、健太郎君があんな人だったなんて。ですって。周りから聞いたことが真反対になりました。おかしいと思いましたが私はあなたの優しさを知りました」

 こいつとって人助けの姿も暴力沙汰の姿も噂でしかない。そして、いま実際見た光景がほんとう俺の姿であると伝えてくるようだ。

「それをしったところで何になる」

「否定してあげましょうか?助けてもらったお礼に」

 普通そういうのは小悪魔的に煽り顔をするんだよ。真顔で言われるとマジに思えるだろ。

「それをしたら表面はよくなるかもな」

 結局は美咲の弱みを握ったとか言われるだけだろうがな。

「それもそうですね。でしたらこのままわた、あなたの部屋で手料理をふるまいます。あなたに借りを作りたくないので」

 美咲の家にはあげさせてもらえないようですね。っまキッチンはほぼ使ってない新品同様だからいいか。

「了解だ」

 美咲の家に買い物したものを置き俺の家に来た。

「新品ですね。料理しないんですか?」

「あれ」

 指をさした先はコンビニ弁当の空箱。

「な、なるほど。では始めますか」

 ひょんなことで美咲と出会いいきなり手料理か。楽しみだ。

 

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