第147話 家までの道
まだまだ家までは遠い。いつも通りのペースであればすでに家にいるだろう。しかし今は体力の限界が早めの美咲がいる。早いペースになるとすぐに息を切らしてしまうためまったりとあるいている。おぶれば早くはなるだろうが荷物があることと単純に暗いことから転倒の懸念が生まれたためていあんすらしていない。
「ごめんなさい。もっと早く歩ければ」
「気にするな。たまにはゆっくりもいいだろうし」
こういった二人の時間も正直貴重な気がしてきた。返答はしていないとはいえ、薫さんの提案を拒否症としている。そうなれば最悪の場合、美咲と一緒に入れるのも終わるかもしれない。残り少ないかもしれないこの時間も大切に踏みしめたいのである。
「不思議ですね」
「何がだ?」
「あなたとの思い出は何もないのに懐かしく感じます。」
理解はしていても前のことが忘れているその事実を本人に言われることはなれない。辛くなってしまう。
「いずれは思い出すだろうから安心しろ」
今の俺に言えるのはこれだけだ。
「ほんと最低ですよね。思い出だけうつけて本人は忘れる」
だんだんと美咲については理解してきた。きっと美咲は毎回何かをトリガーにして記憶をなくしている。自覚がなくても自然と気づいてしまう。それを何度も繰り返していたら記憶としては忘れていても体は忘れられていないのだろう。だから、覚えてないのに辛くなっていく。
「お前ってどうやって記憶がないのに人に合わせているんだ?」
ふと気になってしまった。彼女は記憶がないのに周りにしっかり合わせることができている。いくら美咲に適応力があっても何の違和感もなく話すのは難しいだろう。
「私に付きまとっている人いますよね。彼女のメモを定期的にもらっているそうです。彼女のことは知らないのですがしつこくメモを突き付けてきたのでここ最近の出来事はそこから仕入れてます」
木佐山だったか。美咲はどこかのタイミングで木佐山と出会い、記憶のなくなるトリガーのタイミングで彼女にお願いしてメモを定期的に送るようにしたのだろうか。すべてを確認していないのは木佐山に怪しまれないように常にここ最近のメモを見せるよう命令しているからだと思う。だとすれば木佐山は美咲の変化を感じても確信を持てないのかもしれない。
「なるほどな。それだけでも対応できるのも相当やばいと思うけどな」
「ありがとうございます」
表情がなくまだ前よりもきつい対応をしてきたとしても徐々に回復してきていると思う。まだ希望が見えた。
「もうすぐつくな」
「そうですね。あの。グッズたち明日まで預かっててもらいます。おそらく家に入った瞬間に寝ると思われます。そうなるとグッズを踏んずけてしまうと悪いですので」
「わかった預かっておく」
これがグッズに力をいれるガチのかがみってやつか。
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