第106話 涙の理由

「辛かったですね。ごめんなさい」

 涙は引いて片づけを終えてソファーに座る美咲。

「お前そんな辛い物苦手ならもっと甘いカレーにしろよ」

 頼むからもうそんな辛い物作らないでほしい。今ずっと口の中が痛い。毎回落ち込んだらからいもの確定とかものすごく怖い。

「大丈夫です。今日までですから」

「そうか」

「倫太郎君。少し重い話していいですか?最後まであまり触れないで終わろうと思いましたが明日どうなってるかわからないので」

 美咲はふるえている。口調もそうだがすごく弱弱しい。

「いいぞ」

 言いたいことは理解してる。どれほどつらかったかも。俺からはふれないが相手がふれるなら聞いてやるのが俺のやくめだ。

「ありがとうございました。今日まで。我慢させてましたよね」

「ほんと。お前があんな落ち込んでるからな。ま、それでもあらがおうとしてたのは伝わった」

「私がそうできるのも倫太郎君がいたからです。本当は文化祭までだった。その猶予を今日まで伸ばせたのもあなたでした」

 部屋に漂う寂しさと不安が増していく。

「お前。テストの期間に何があった。テストの点数が悪い話じゃないだろ」

 様子がおかしい。椎崎は弱音をはくときはもっと感情が出る。だが、今はただ重い空気。これは諦め。

「たしかに点数が悪かった。でも、そんなの決まっていたことです」

 決まっていた?じゃぁ自己採点が悪かったのも。

「ちゃんと説明しろ」

「できません」

「なんでだよ」

「あの人に聞いてください。私からはできません」

 どういうことだよ。あの人?薫さんだろう。何を知っている。何をした。これからどうなるんだ。聞きたいことがいっぱいだ。

「なら連絡先を教えろ」

「もってませんよ。あの人の情報は私は与えられていない」

「お前ら姉妹じゃないのか?」

「姉妹でも対等でないです」

 薫さんと美咲の関係は打ち上げの時のを見て理解できた。だが、俺の想像して板通りの関係だっていうのかよ。だとしたら。

「俺にできることは」

「一つは壊れた私を助けてくれた。そこであの人からチャンスを与えられました。でもそれがかなわなかった。もう仕方ないんです」

 壊れた美咲を助けた。それは文化祭のことだろう。だとしたら文化祭のあと。何だ。あのあと美咲に何をふきかけたんだ。

「いま。その結果ということか」

 美咲の調子が悪かったんじゃないのか。俺が美咲の順位を奪ったのか。あいつは命令に従順。美咲の姉がなにか点数の細工をした。そして俺は原石といっていた。それは美咲に対して。本当は使う気なかったが薫さんはこうなる未来すらもよんでいた。だからあの言葉を残した。美咲の口から言わせる権利を与えるために。

「お前は何者だ。薫さんからは許可を得ている」

「そうですか。なら最後ですし話してあげますか」

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