第50話 初めての通話
久しぶりに椎崎のいない夜を迎える。ここ最近は椎崎と一緒なのが当たり前だった。夕食は久しぶりのカップラーメン。安定のおいしさはあるがやはり椎崎の偉大さを感じてしまった。
電話がかかってくる。先ほど登録した椎崎からだ。
「今から向かおうか?」
「いえ。少しだけ落ち着いたので話しようかなと」
声のかすれは消えだいぶ回復したようだ。
「いいけど。明日は休めよ」
「わかりました。回復しても安静にしてます」
嫌そうな声が聞こえた。仕方ないことだ。あの姉が二日連続で来る気もしないし、ほかの人の迎えは難しいのだろう。
「それで話って」
「何話しますか?何も考えてなかったです。1人でいるのが少し寂しかったので」
「なんで無理をした。そもそも足の痛みのそぶりは嘘だったんだな」
俺は容赦ない。気になることは聞くだけ。
「だって。あなたのほうが動いていたのに私が学校休んだら負けたようものじゃないですか」
「周りに迷惑かけてでも俺に負けたくないのか?」
「私何かしました?」
「覚えてないのか?」
「そのあなたと話して。いつの間にか部屋にいてあなたが目の前にいました」
無理をしている椎崎に手をだそうとしたことや、大和が無理やり連れて行こうとして暴れたことなど今日起こった出来事は何も覚えていないようだな。
「つらそうにしてたお前を大和が無理に保健室につれていった。変な噂がたったぞ」
隠したところで詳細を知ることになるのだから今知って学校に行ったときは冷静にいたほうがよいだろう。
「大和くんですか…。仕方ないですね。みなさんに説明が大変そうです。ほかは何かありました?」
「あとはいつも通り大丈夫の一点張りだったな。周りがより心配しててしつこかったから態度は若干悪かったくらいか」
「そう、ですか。みなさんにも迷惑かけてしまいましたね。反省します」
病人に落ち込ませるのまずかったか。
「みんな分かってくれるだろうよ。お前には甘いからな」
「ですね。やはり倫太郎君と話すのは落ち着きます。あの。本当に誰が来たかわかりませんか?」
「本当に知らん。お前の両親だろ」
誰が迎えに来たか。そこはやはり気になっているようだな。
「あの人たちは忙しいから来ないと思います。…でも可能性がある人がほかはないです」
姉についてはふれようとしないようだな。おそらく自分自身でも察しはついてるのだろう。だが、それを信じたくはない。理由はわからないが二人には他人が無見入ってはいけない壁があるのだろう。
「そんな忙しい人がきたでいいだろ。あんま考えすぎんな」
「それもそうですね。私に顔を見せなかったってことは運んだだけでしょうし。ありがとうございました。また眠くなったので寝ます」
「おう。ゆっくりな」
電話が切れた。
「ご主人様が来てくれたのかな。だとしたら私…」
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