第51話 安静

 朝になった。学校に行く時間か。いったん椎崎の様子を見に行くことにしよう。鍵も返したほうがいいだろうし。

 支度を済ませ。椎崎の部屋のインターホンをならす。

「はい」

 インターホンのマイク越しから声が聞こえてくる。昨日のように声がかすれている感じもなく回復したように思える。

「俺だ」

「わかりました」

 カギをあけてもらい扉が開く。そこには普段着に着替えた椎崎がいた。見た目だけは感知したように思える。だが着替えた姿が制服でないし今日は休むようだ。

「回復したように思えるが休むんだな」

「まぁ。少し熱がありますし。今日は休むことにします」

 ちゃんと助言を聞いてくれたようで安心した。昨日迷惑をかけてることを考えが得たら当たり前か。

「そうするようなら安心して学校に行けるわ。そうだこれ」

 カギを差し出す。

「いらないですよ。スペア持ってますし」

「いや、さすがに女子の部屋のカギを持ってるままはまずいだろ」

 これバレただけで学校で刺されるのは確実。さらに争奪戦っていう名の奪い合いが起こるのは必然だろう。 

 そもそもこれを持った状態で椎崎と喧嘩したらカギを盗まれたとか言われかねない。

「いいですよ。あなたは悪用するような人じゃないですし。それなりに信用してますので。安心してください。それを使って脅しもしないので」

 俺の考えがばれているようだ。

「あとで俺の部屋のスペア渡すからな」

 これで等価交換としておこう。こいつの部屋のカギは俺の部屋で封印すればいいことだ。学校にもっていかなければ椎崎が黙っている限りはばれることはない。

「わかりました後ほどいただきます」

「お前の安全もわかったし学校に行くか。帰ったらまた顔出すから」

「はい。…はぁ。 待ってます」

 俺と会話を進めるたびにだんだんと顔色が赤くなっていた。本当はまだ回復しきれていないが無理していい顔を保っていたってことか。

「っじゃ。また」

「はい」

 大丈夫なのかはわからないが俺に心配させないように隠したんだから。俺もそれにこたえてみなかったことにしないとな。

 扉を閉めた。 

 バタン!

 扉の奥から鈍い音が聞こえた。

「おい大丈夫か?」

「いってください」

「わかった何かあったら連絡くれ」

 ここで残ればらちが明かなくなる。今ここで扉を開けたら俺は看病をするだろう。そうなれば学校はよくても遅刻。最悪やすみになる。椎崎はじぶんのせいでそうなることを望まないだろう。本人の声も聞こえたから学校に行こうか。

「さすがに最後まで平常心を保つのは無理があったか」

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