第155話 俺の彼女などそんざいしない

 食事をおえた。琴音はしっかりと野菜を全部おいしく食べた。椎崎の腕のよさはやはり一級品ってことだな。

「おいしかった!!ありがとう美咲さん」

「ありがとうございます。私は疲れたので部屋に戻ります。用意できましたらご自由に部屋に来てください。寝てるかもですので鍵渡しておきます。気にせずご利用ください。それでは」

 琴音に鍵を預けて俺の部屋をでていった。

「美咲さん大変そうだね」

「そんな中手伝ってくれてるんだからちゃんとしろよ」

 今日は寄り付かれてるように思えた。俺もあれほど疲れているとは思わなかったな。それほど演じるというのは疲れるのかもしれない。常に琴音に合わせてキャラを調整しないといけないわけだし。

「わかってるって。それよりさ。美咲さん変わったね」

「何がだ?」

 まさか美咲の演技に気づいたのだろうか。

「うーん。前って私たちに合わせていたって感じしたんだけどね。まだ少しだけだけど自分から行動するようになったというかさ」

 そちっか。琴音にそう見えたということは演技がうまくいったのだろうな。

「そうか?いつも通りだろ」

「とくにお兄ちゃんといるときって力抜いてるよね」

 すごいな。まだ数日しか見ていないというのにもう琴音を理解している。相当見ているな。

「俺はおまえがこわい」

「で、どうなの?美咲さんとうまくいってる?」

 俺は琴音が美咲をよく見ていた理由をすぐに理解できた。要するにこいつは俺と美咲が付き合っている。または、付き合っているかもしれないと思っている。

「何もねーよ」

「えーうっそだー。告白はどっちから?」

「あるわけないだろ」

 やはりそういうことだったか。

「ほんとうは?」

 結構しつこくつっついてくるな。これはここで切らないといけないな。これが発展して美咲のほうにまで聞き始めたらあいつに迷惑をかけることになる。

「あのな。俺たちはただの隣人。学校では仲良くないからな」

「それはお兄ちゃんが問題児だからでしょ?」

 間違ってはいないがなんでそうなる。

「それもあるが。だとしたらあいつが俺と付き合う必要ないだろ」

 とりあえず琴音の勘違いだったという落ちで終わらせる。

「そっか。だよね。ごめん。美咲さんには聞かないから安心して」

 残念そうで悲しい目をしている。

「わかってくれるならそれでいい。そもそもなんでそんなこと」

「美咲さんがお姉ちゃんになったらすごくうれしいから?私の無理に付き合ってくれるし自分の限界でしっかり止まるから気をかけなくていい。こんないいひといないよ」

 完全に私的な感情であった。一瞬深い理由があると思ってしまったじゃないか。

「全くお前ってやつは」

「いい性格でしょ!」

 笑顔をみせた。ほんといい性格をしている。自慢の妹だよ。

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