第37話 スーパーアスレチック
「ほらりんにい!はやく!!」
椎崎が下に行き俺らはさらに上を目指す。椎崎という最大の枷が外れ仲直りも成功。さらにしっかりと寝て休憩がとれ、琴音のコンディションは絶好調である。
本来であれば難易度が上がりゆっくり進むところが多いはずが琴音には全く持って無意味である。
「待てって」
それについていくのは大変だぜ。
「いやっほー!」
でもすごく楽しそうだ。細い紐の上を走るやつなんてこいつくらいだろう。
「はぁりんにい運動してなかったでしょ。この程度でねをあげるなんて」
ものすごくゆっくりと渡る俺を指摘してくる。
「超人と同じにするな」
「りんにいは来てくれるからね!手を抜かなくてほんとありがたいよ」
思いっきり遊べば周りと距離が生まれる。手を抜けば楽しくない。自慢の妹だし。俺が距離を置くことはありえない。とはいえ、俺にも限界はある。自慢な妹のペースを落とす話でもするとするか。
「お前受験どうすんだ?」
「え、うわ!」
暇から足を滑らせて命綱につるされた状態になる。
「大丈夫かよ」
「う、うん。急に変なこと言われたから驚いた」
受験。それは今の琴音にとって最大の壁だろう。あと数か月すれば受験シーズンになる。
「特待生とか取れないのか?」
今年は辞退して記録がないとはいえ、圧倒的な力を持っているのは周知されている。強豪校からお声がかかっても変ではない。
「…あるんだけどね」
特待生になれば陸上部に入ることになる。それが懸念。陸上はもうしたくない。とはいえ、高校に行くなら陸上を利用する必要がある。なぜならそれほど運動に全振りしてきたやつだからな。
「嫌われることが確定しているのにその中に入るのはおかしいでしょ」
「なら高校に行かないのか?」
会話ができる程度のペースで進むようになった。
「わからない。でも嫌われるくらいならそれもありかなって思ってる」
傷が癒えるには時間がかかっているみたいだ。俺が思っていたよりずっと重傷だなこれは。
「説得が必要なら言え。素行が悪い不良になり下がった俺だが親にくらいなら説得の手伝いしてやる」
「あーもうまどろっこしい。やめだ!」
急に元気を取り戻した。そして俺に詰め寄る。
「いい?今私に必要なのは優しさじゃなくてかつなの!!黙って勉強しろくらい言えないの!」
なんか怒られたんだが。
「陸上はやらない。勉強はできない。今絶望的な状況。落ち込んでる暇があったら体動かす。常識でしょ!それを勉強に変える役目は誰が担うんですか?」
怒られ方の方向性が全く違う。
「心配して損した」
「心配してくれてありがとう。ってことでどんどんいくよ!」
またペースが戻った。これは無事では帰れなそうだな。
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