第87話 終わらせる
そしてまた俺の部屋での食事になる。今日は2人ほぼ同じ時間に帰ってきたから夕食を作り出している。
「そういえば倫太郎君って休憩っていつですか?」
「11時から14時以外は問題がなければ暇。というかお前も一緒だろ」
俺たちはステージを成功させるという結構大きめの任務がある。そのため見回りなどは流れ作業で大丈夫で言われている。いわば自由行動だけで問題あったときは対応をするだけってことだ。それは椎崎も同じである。
「あ、そうでしたね。ごめんなさい」
そこから会話がはずむことがない。
「何もしてやれんかったが大丈夫だったんか?そっち」
「大変でした。いろいろと話をすっとばしてて大和くんたちが来てくれてほんとによかったです」
「当日無理だけはするなよ」
「大丈夫ですよ。そこまで調子が悪いってわけでもないですし。私はちゃんとできるんです」
椎崎としてのプライドか。みんなに仕事内容はばれているだろうし裏方とはいえ注目をあびるのだろう。そこで椎崎がしっかりできなかったら周りからの評価が変わるかもしれない。それを椎崎は恐れているのだろう。
「あつ!」
キッチンの方を見ると指を抑えていた。
近づいてみると指が白くなっている。
「大丈夫か?」
「はい。少しフライパンを直接触っただけなので。!」
急いで冷やすものを用意し手に巻いた。
「もう休んでろもう盛り付けとかは俺が休んでるから」
「ごめんなさい」
めずらしいことだらけだ。ほんとにどうしてしまったのだろう。何にも集中できていない。俺と会話がないことを重く受け止めているのだろうか。だとしたら早急になんとかしないと。
料理を盛り付け運んでいく。椎崎のようにきれいな盛り付けにはできないが俺なりに頑張ってみた。
「大丈夫か?」
「はい。利き手でなくてよかったです」
痛そうな表情は隠しきれていないが少しずつ食べ物を口に入れている。
「何が原因だ。もし俺ができる範囲で解消できるよう手伝うぞ」
「大丈夫です」
「リハは害はなかったが料理で実害でてる。明日もこの調子だと周りに迷惑をかける可能性がある」
「気にしないでください」
せめてそのつらそうな表情はやめてほしい。こんな姿見せられて何もないって思えるわけがない。
「そんなに頼りないか?」
「違います。明日には解決させるので待っててください」
「お前みたいなやつは失敗して学ぶべきかもな」
「え?」
「ま、失敗したら椎崎ブランドを落とすかもな」
「なんですかそのいいかた」
それでいいんだ。本人がなにもはかないんならこうするしかない。
「本当だろ。せっかく人が失敗しないように手伝うっていってるんに何も言わないんだからな」
「あなたみたいな人にはわからないんですよ。失敗を許されない状況で失敗して追い込まれた人の気持ちなんて」
そうだ。もっと怒れ。そうやって気持ちをすっきりさせろ。俺程度のために失敗するような気持にする必要はない。
「知るかよ。俺はそんな状況になってない。今回だって変わりが聞く仕事だしな」
「明日覚えていてください。必ず成功させますので」
沈黙の食事にまたなりこの日を終えた。完全なる断裂が成功しただろう。あとは自分の力で乗り越えればいい。それですべてが終わる。
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