第88話 文化祭スタート
「りんくんこっち!」
俺の腕を引っ張る双葉。今までの実行委員の仕事で一緒に出掛けることもなかったうっぷんをすべて晴らすかのように俺を拘束する。大和たちは仕事だから完全に二人きりだ。
「お前らチョコバナナどうだ?」
歩き始める声をかけられた。別クラスの生徒だ。
「ほんと食べる!」
「特別だ一本だけ300円にしてやる」
かつては嫌われ者だった俺ら、といようより俺の生活はだいぶ変化している。
「実行委員しっかりやれよ!」
「わってるわ!」
実行委員の仕事が周りの空気をかえていった。椎崎や大和に迷惑をかけないどころ感謝されているという噂。それが俺の悪い噂をうわがいていた。俺が気づいたときには気さくに話しかけてくる人が増えた。それと並行して双葉も会話する生徒が増えた気がする。うざがらみもたまーにあるがそれも悪くない。ちなみにチョコバナナは買っていない。
一年のクラスを歩けば普通に声をかけてくるひとばかりで避けるやつはいない。
「食べる?」
食いかけのチョコバナナを差し出してくる。
俺は間接キスにならないように横から少しかじる。双葉は間接キスになるが気にしないだろう。
「うまいな」
「だよね。文化祭いろんなお店あっていいね」
「だな」
椎崎と違って双葉の安定感がいい。こいつは周りを気にしないタイプだしそう簡単にキャラを変えたりしない。一度つかんだらなかなか解放されないことを抜かせばほんとに接しやすい。
「あ、大和君!」
パトロール中の大和が歩ていた。
「楽しんでるか?」
「もちろん!これ食べる?」
誰にもおかまいなしにチョコバナナを与える双葉。ほんとにこいつは気にしないんだ。
「ありがとう少しもらう」
大和はなんのちゅうちょもなく双葉の食べた部分を食べる。なんだよ逆には木菟なるだろ。
「うまいな」
「だよね。お仕事頑張ってね」
「おう」
そしてパトロールに戻る大和。
「そういえばお化け屋敷あるんだっていかない?」
お化け屋敷かさすがに学校のだし怖くないよな。
「いいぞ」
ここで抜けたら男じゃない。逃げるわけにはいかない。
俺は後悔した受付時点で思ったよりレベルが高い。
「りんくん怖いんでしょ手をつかんでてあげる」
捕まれたてはすごく震えている。
「りんくんふるえすぎだよ」
いや俺じゃなくて双葉さんですよ。
中に入るとめちゃくちゃ暗い。怖い絵などが並んでいる。
「な、なーんだ。この程度か」
バーン!!
「いやーー!!!」
急に目の前にあった井戸をもようした段ボールから人がでてきた。双葉は主言い切り悲鳴をあげて俺にぶつかってくる。いい客だわ。
「りんくん大丈夫だから怖くないから落ち着いて」
いや全部双葉さんあなたの反応ですよ。
「うわーー!!」
「ぎゃーー!!」
終始双葉のリアクションはすごかった背中にこんにゃくやろくろ首、火の玉。あらゆる仕掛けすべてに仕掛け人が大喜びしそうな模範的な驚きを見せる。俺からしたらめちゃくちゃ楽しい。
「りんくんほらゴールだよ。全く怖がりなんだから。私は楽しかったよ」
そして最後まで俺が反応したかのように話を進めていた。きっと終わってからも怖かったとは認めることはないだろうな。
「たのしかったー!」
「ならもう一回いくか?」
「いやほらりんくんも時間あるしほか回ろうか」
返し方うまいな。それにしても学校ごときのお化け屋敷でこのありさまとか。遊園地のいったらどうなるんだろうな。椎崎と戦わせてみた、いやあいつはどうでもいい。考えるな。
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