第八話 デート

 休日というのは最高だ。誰にも邪魔をされず、誰にも見られるず、誰からも気を遣われない。ただ寝れるだけで時間を過ごす。何もない一日っていうのは一番幸せなのかもしれない。

 ピン―ポーン

 インターホンが鳴った。もちろん居留守を使う。売り込みの奴らにつかってやる労力はない。

 ピーンポーン

 しつこいやつだな。俺は折れないぞ。どんなにしつこくても出てやる気はない。


 ピンポーン。ピンポン。ピンポン。ピンポン。

 

 さらに連打してきた。さすがにうるさすぎる。迷惑ってのを知らないのか。だが、俺はでないぞ。とことん居留守をしてやる。

「倫太郎君いませんか?」

 この声。まさか…

「あのいるならでてきてくれませんか?」

 椎崎だな。誰よりもめんどうなことに巻き込んできそうなやつがきた。インターホンの連打してる時点で俺が家からでていないのを把握したうえでの行動だろうな。

 いったん通話で対応することにしよう。

「どうした?」

「一緒にお出かけしませんか?」

「え、やだ」

「お願いします。男手が必要なんです」

 いっていることだけはかわいらしいが相変わらずの棒読み。

「お前、友達いるだろ」

「あんな人たちとで書けたくないです。あなたなら勘違いもしなければ後に実害のでるようなこともされない」

 演じているとはいえひどい言われようだな。だが、まぁー。椎崎と仲良くしてる連中が出かける誘いがくればデートとか好まれてるとか勘違いするだろうな。

「わかった」

 俺が折れないと一日このやりとりで終わるきもしてくるし仕方ないが出かけることにしよう。

「ありがとうございます」


 支度を済ませて扉を開けた。すると外で座っている椎崎がいた。

「行きますか」

 立ち上がるとスカートに汚れが見えた。

「待っててやるから着替えてこい」

「いえ、この程度。座ったのも私がしたことですし」

 目的のためなら見た目は関係ないってことか。ほんとにプライベートは真逆って感じだな。少しの汚れも気に掛ける奇麗好きが聞いてあきれる。

「いいから」

 椎崎はかわいい。このクオリティを下げるようなことはしたくない。何より、はたから見たら彼氏が気にかけてやれよって周りから思われたらせっかくの休みなのに学校と全く変わらん。

「わかりました。すいません」

 一礼をすると部屋に戻った。

 

「お待たせしましたではいきますか」

「おう」

 着替えを済ませた椎崎が戻ってきた。

「で、どこいくんだ」

「ワンダーランドです」

 …

「は!」

 ワンダーランドいえばこのあたりで一番でかいテーマパーク。カップルに人気のスポットともいわれている。

「もう外出たんでいきますよ」

 こいつ。俺が事前に行く場所言ったらこないことわかってたから最小限の情報だけで俺を外に出してきたな。行く場所を出る前に聞かなかった俺も悪いんだが。

「それで、なんで一緒なんだ」

「にぶいですね。カップルで行くともらえるものを手に入れるためです」

「なるほど。ますます俺が適任ってわけだ」

「そうです。今までなら誘っても問題ない人はいませんでした。あなたは利用するの値する価値の持ち主です。あ、これは誉め言葉もってもらっていいですから」

 もっといい言い方あるだろ普通。誉め言葉だとしても傷つくぞ。

「それはよかったですね」

 こうして互いにまったくの好意のない男女でテーマパークの行く日となったのであった。

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