第60話 煽りの天才
「その顔やめろ」
俺は今前代未聞のことが起こっている。椎崎が笑顔でいる。今まで見たことのないくらい笑顔だ。
これは帰宅してからのことだった。
部屋に戻ってきたらもう椎崎が料理を進めていた。しかもだいぶ豪華なものだった。俺が帰ってきたのはお構いなしにすすめている。まだ一度も会話をしていなかった。
夕食が出来上がるとようやく口を開いた。
「おめでとうございます」
笑ってる声も交わっている。顔は穂が赤くなっている状態。
「確認していいか?」
「ハイ。あんなに昨日拒否してフラグ回収した倫太郎君にお祝いです。たんとお食べください」
怒っていいだろうか。煽りのレベルが高い。料理のクオリティをすることで最大の煽りと怒られたあともこのめしで俺を満足させておさめることができる。頭もしっかり使ってるとこさすだわ。
「俺にこんな労力使って何の得があるのか」
「得なんてありませんよ。倫太郎君。クス!もう最高ですよ!久しぶりの面白エピソードですよ。だって一日ですよ!フラグ回収早すぎませんか」
ダメだ怒りそうだ。いったん冷静になるために飯を食べよう。
ご飯は文句なしの最高だ。手抜きではないのが伝わってくる。だ、が。
「おいその顔やめろ」
目の前でずっとにやにやしてみてくる。どんだけ面白かったんだよ。
「だいぶ落ち着きました。学校で冷静保つのも大変だったんですよ。まったく有名人なんですから過度に目立つようなことやめてくださいよ」
「俺に言うな。今回はくじ運が悪かっただけだ」
大和と椎崎の呪いだ。俺は何も悪くない。
「でも、安心もしてるんですよ。倫太郎君と学校でかかわれる機会ができたので。倫太郎君はいつも通り椎崎って呼び捨てでいいのですからね。私は草加くんっていいますので」
「憶測が飛んだとしてもお前が否定してくれれば解決だし。俺は普段通りいかせてもらう」
下手に知らない感じだしたら逆に怪しくなりそうだし。
「そうしてください。ここでいいところみせてみんなが倫太郎君見直してくれることに期待ですね」
そうなることはないだろう。俺は椎崎と大和にすべての仕事を投げつける予定だし、外野から見たら椎崎に仕事を押し付ける最低の男という俺を象徴するような名誉ある称号を獲得できる。余計に椎崎と俺の距離が生まれそうな称号だし学校でかかわらなくてもよくなりそうだ。
「あまり期待しないで俺を助けてくれ」
「まかせてください。倫太郎君がさぼろうものなら私が何としてでも終わるまでやらせるので」
「いやそうじゃないだろ」
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