第161話 閉ざされた光の道

 彼女は目の前に見える光の道をただ走っていた。光を遮るものは残りわずか。終わりはまだまだ先である。だが彼女の表情は常に笑みだった。

「ここから」

 彼女はさらに加速させる。そして遮るものを全て置いていった。あとは光の道を進むだけ。確信を持てた。

 みるみる後ろとの差は広がる。圧倒的早さ。そしてそのまま終わった。

「やった優勝だ!」

 彼女は喜んだ息も上がり限界に近い。


「2位だ!!」

 そして後から数名が終わりを迎える。

「3位かー。おしかったなー」

 そう終わりを讃えあう元に彼女は進む。

「おつかれ」

 声をかけたしかし2人はまるで彼女がいないかのように別の場所に移った。

「ほんとあいついると走る気無くすよね」

「わかるー。ほんと消えてほしい」

 そして彼女に聞こえるかのように会話をしてきた。彼女は気にせず立ち去っていった。

 

 そして景色が変わり彼女はまだ走り出す。今度も後ろについてくるものはいない。彼女は振り返る。誰1人として自分と走ろうとしていない。みんな戦意損失しながら走っているのがわかった。

「どうせ一位はあいつ。走る意味がない」

 声は聞こえてないのになぜかそう聞こえてきた。自分のせいでみんなのやる気を奪ったと感じてしまう。急に疲れを感じだした。足が重くなった。そして目の前に光の道が薄くなっていく。彼女は全てを悟った。自分の全力をよく思う選手はほとんどいないと。彼女とうとう足を止めてしまった。

 我に帰った時、彼女はベットの上にいる。急に倒れたと言われた。彼女の足に激痛が走った。怪我をしたようだ。原因は不明。

「しばらくは休んでください」

 担当医から指示を受ける。彼女の楽しみはしばらく亡くなることになった。

 だんだんと黒く染まる道に引きづり込まれる。みんなそれを嘲笑う。彼女からは涙が見えた。

「うわ!!!」

 琴音が目を覚ます。

「どうしました?」

 あたりを見回すと人形が多い。すぐに美咲の部屋だと気づいた。

「い、いえ。なんでもないです」

 なんだ忘れても定期的に見てしまう夢に心を痛める。

「ほんとですか?」

「は、ほんとですよ。気にしないでください」

 強く足を抑える。感覚がある。まだ動くと実感する。

「それならいいですけど」

 美咲は再び眠りに戻る。

 それを確認した琴音は洗面台に向かう。そして顔をを洗い出す。

「大丈夫。必ず直るから」

 そう言い聞かせる。涙は止まらない。落ち着こうと思ってもなかなかおさまることはなかった。

「お兄ちゃんにはやっぱりまだ隠しておこ。絶対心配される。それに」

 誰にもバレたくない

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