第76話 仕事過多
「椎崎さんここお願いできる?」
「わかりました」
「あ、こっちもお願い」
「わかりました」
日に日に忙しくなっていく。そして積み重なっていく仕事。椎崎は仕事面においてもしっかりしている。同級生だけでなく先輩からも頼られ人手不足なっているチームの仕事も率先してやるようになってきている。
「また」
木佐山は機嫌がわるい。俺たちは俺たちの仕事があるため重なっていく椎崎の仕事を手伝うのが困難である。
「椎崎様に頼りすぎです」
たしかに今の状況は人によって仕事量の偏りが激しい。
「なら、お前がしっかり止めたほうがいいだろ」
いろいろ理由があるが、今回については椎崎にも問題がある。頼まれた仕事をすべて了承しているのだ。忙しいから今は難しい。それだけでも十分なのに彼女は断ることはない。
「私にその資格はありません。椎崎様がやるというなら見守るだけです。もちろん頼まれれば手伝います」
良くも悪くも椎崎への忠誠心が木佐山の行動を制限しているようだ。木佐山はどんな理由があっても椎崎のことを肯定する。
「ごめんなさい。今日も二人に任せることになりそう」
仕事をしている俺たちに声をかけてくる椎崎。
「かしこまりました。こちらは問題ないので他の方へのサポート頑張ってください」
「ありがとう。お願いします」
そして軽い会話をかわしたらすぐにいなくなった。ほんとに忙しいのだろう。
「…」
心配そうに見つめる木佐山。そのまなざしから辛さを感じ取れる。
「ラッキー。今日は早く帰れるよ。あの子ほんと頼りになるわ」
椎崎に仕事をまかせた先輩の声が聞こえてくる。
「!!」
木佐山が立ち上がる。
「やめておけ」
腕をつかみ木佐山を止める。
「なんであんな人のために」
椎崎に頼る。それは自分がさぼるための口実に使っているだけだ。椎崎は必ず成果をだす。だから任せても安心できる。もちろん椎崎も感づいていると思う。
「お願いをしていいですか?」
「内容によるが」
「椎崎様の説得をお願いしたいです。あなたにはその資格をもっています」
俺を観察した結果のはなしだろうな。ちゃんとした俺と椎崎の接点はうまく隠せていたがそれでも木佐山の分析力はレベルが高い。いくら俺らが隠せても予測はできる。
「俺の話を聞くと思うか?」
「少なくとも私よりは」
「タイミングが見つかれば話してみる」
木佐山の俺の前で絶対見せないであろうつらそうな表情が自然とでている。あれを見せられて何もしないわけにはいかないだろうな。
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