第77話 説得
実行委員の仕事を終え部屋に帰ってきた。椎崎はまだ仕事が残っている。手伝おうと思ったが、「すぐ終わるから先に帰っていい」といわれ帰ることにした。やはり普段の終わる時間では終わらせないほどすることが多かったのだろう。
夕食は椎崎を待つことにしよう。俺は料理は得意でないのでスーパーで総菜を買ってきてある。温めるだけでよいのだ。空腹はすごいが話すタイミングは食事中が一番良いだろう。
「今帰りました」
だいぶ暗くなった時に帰ってきた。
「遅すぎるだろ」
「ごめんなさい。今日はちょっとやること多くて…」
今日は相当疲れたようですでにうとうとしている。
「すぐ終わるって言ってたろ」
疲れている様子があるから強くいいたくない。だが、今日言わなければ明日同じことが繰り返されるだけだからな。
「思っていた以上に確認することがありまして。明日からはなるべく早く帰るようにします」
明日も同じことを繰り返すようだな。やはりここで解決させておく必要があるな。
「一年に頼るのがどうかとも思うが、無理するのはやめろ」
「皆さん忙しいんですよ私みたいに予定がない人が仕事に回ったほうがいいでしょ」
「なら俺とか木佐山も暇だから声かけろ」
「お二方はすでに私の通常業務をこなしてくれてます。それで」
しばしば目をこする様子が見受けられる。ふとバランスを崩し、手で壁に支えを求めるようにして体を支えている。
「自分の体を理解できてないやつが他人の業務なんてするな」
「私はまだ動けます。この程度でねを上げる私じゃありません」
冷静をたもってきた。だが、冷静では彼女を止められない。そう感じてしまった。
「そうやって一人で何でも背負って。自分に嘘をついて、体の限界を壊して。そんなことして何になるんだよ」
「全部自分で背負ってほかの人には何も話さないあなたに言われたくないです」
もちろん自覚はしている。完全に俺へのブーメランだ。
「それよりご飯食べませんか。話はちゃんと聞きます。私も今回のことについては話します」
「わかった」
あつくなって忘れていたがだいぶ遅い時間なんだよな。俺も結構空腹だし。このまま言い争いになったら解決しなさそうだしな。
ここまで沈黙した食事も久しぶりだ。何を話せばよいかうかがっている。先に言い始めれば討論の始まり。タイミング次第で不利になるかもしれない。そのタイミングを探るんだ。
「やっぱりおいしくないです」
先に椎崎がしかけてきた。食事の話でそらすつもりだろうか。
「悪いな。料理センスないの自覚してるから総菜を買ってきた」
「違います。こうして何も話さず食べることです。なので。いったん互いにさっきの話忘れて普通に会話しましょう。そらすつもりとかでないです。冷静に互いに話すためにいったん通常に戻したいんです」
間違っていないように思えるが話をそらしているようにも見えてしまう。
「もう勝手にしてくれ」
「わかりました。今日の理科でですね…」
これが終わったらちゃんと話す。そう思っておけばいい。
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