第78話 封じる
「たまにはお惣菜を買うのもありですね。これはこれでおいしいです」
普段通りの会話が続く。最初のぎくしゃくした状況が緩和されているのが感じ取れる。
「でも俺は、お前の料理がいい。負担というなら買うのもあるだが…」
不思議だが椎崎の料理が良いと思っている。たしかに総菜はおいしいが椎崎を超えるていると思えない。
「うれしいこと言ってくれますね。安心てください。基本はそうするので」
安心する。
「それでは明日も早いので帰りますね」
何もなかったかのように席をたちバッグを持ち出す。
「まだ話は終わってないだろ。このまま帰れると思ってたか?」
「やはりだめですか。ならちゃんと意見交換しますか」
今日のおれは一味ちがう。いい雰囲気にして帰ろうとすることくらい誰でも予想できるそんな簡単な逃げ方を俺が逃すわけがない。
「俺の意見としてはほかの仕事に手を出すのは気にしないが残ってまで仕事をするな。自分に負担をかけるな。追い込むな。それと」
「まってください。ちょっと多すぎませんか?私だってまずいと思ったんですよ。でも止められなくて」
自分の制御ができないということだろうか。だとしたら木佐山の行っている見守るは悪い方向に行っている。あいつがしっかり見てやればいい。
「そんな仕事が好きなのか?」
「いや、その。…嫌いではないです」
言葉をつまらせる。何か言いたくない事情があることがあるんだな。
「なら俺にいえ。そのまま大和に丸投げすっから」
俺の仕事は増やす気はない。悪魔で大和に仕事の提供をする中間になるだけだ。
「今日みたいなことは明日はないと思いますので。あんなに多くの人にまたさぼられたらあれですけど」
「気づいていたのか?」
「もちろん。みんなできる私に押し付けてすぐに帰ったこともそれで先生たちにいいところ見せてるとかいわれているのも」
そこまで知っててもやる理由がある事情ってなんだよ。
「苦しくないのか?」
「まったくないです。私はこういうことをするための人間ですから」
ひきつった笑顔を見せてくる。嘘を隠すがうまいこいつが明らか嘘だとばれるような表情をするってこと。相当追い詰めてるんだろう。
「ったく。本当なら強制的に止めたほうがいいのかもしれないが、説得は無理そうだな」
「わかってくれて何よりです」
「隠すことだけは禁止だ。無理なら無理といえ時間がないなら頼れ。そもそも事前に無理だと思ったらしっかり否定しろ。それができないんならお前は当日以外の仕事に参加するな」
こいつの仕事量の調整は無理だろう。だからさらに大本から叩き潰す。俺との約束が守れないならそもそも実行委員の仕事をさせなくする。
「それじゃ人が」
椎崎は知っているこの状況で自分が抜けるそれがどれほど大変な出来事か。
「お前の穴は俺が埋める」
「無理ですよ。あなたの力量では」
そして椎崎は知っている俺に椎崎の仕事量を同じ時間でこなす力がないことを。
「お前の倍の時間を使えばいいだけだろ。体力ならお前よりあるからそれくらい余裕だ」
「それこそあなたの体が」
そして椎崎は今自分がどれくらい疲れがたまっているかがわかる。優しいこいつはこの状況を他人にさせない。たった一ヶ月だけの小さな出会いだ。だから何もわからんがその少ないもんだけで無理やり止めてやる。
「なら守れ。俺が壊れるか。2人ともなにもなく平和に終われるか」
「…卑怯ですよ。あなたそんなの一択しか」
バッグを握って逃げるかのように部屋をでていく。とりあえずうまくはいったのかな。だいぶグレーゾーンでまだまだ気が引けないが。頭の整理はついてないだろうからな明日の様子はしっかりと見るか。
「面白いくらいにこれの縛り方理解してきたね。よき主に成長してきてる。今後にさらに期待ってところかな」
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