第215話 冬休みの終わり

 今日は琴音が帰る日。そして俺たちの最後の冬休みになった。

 新年に入り楽しい時間を過ごす予定であった。だが、すぐにそれが難しいことに気づいた。俺は大事なことを忘れていた。宿題をやっていなかったのだ。その結果、俺は琴音の隣で宿題をすることになった。もちろん美咲抜きでできるはずもなく兄妹そろってお世話になってしまった。そんな毎日を送っていたらあっという間に冬休みが終わりを迎えていた。

「今度来る時は受験の日かな?」

 琴音が予定をつけ始める。どうやら受験後にこっちにも顔を出すようだ。2日目考えたら近場にいる方がいいしいいと思う。

「頑張ってくださいね。わたしの時間の使った時間が無駄にしないことを願います」

「うっ」

 琴音の胸に矢が突き刺さったような音が聞こえてくる。美咲は冗談混じりで言ったのだろうが、すでにプレッシャーを感じている琴音からたしら確実に重みになっている。

「あ、すいません。そんなつもりじゃ」

 すぐに美咲も弁解に入る。

「大丈夫だよ。わかってるから。毎日毎日追い詰められる気持ちと戦うだろうけど頑張ってみる」

 琴音もすこし成長を遂げているようだ。ゴールの見えない受験という壁。厳密には合格がゴールでありスタートであると言えるが。琴音からしたらゴールテープのように確実に一番を取れないものはゴールとして見えないのだろう。そんな途方のないレースに昔の琴音ならさまよっていただろう。だが今はしっかりと目標を決めそこをゴールと見ている。だから、走ってる時のようなワクワクと勝つための冷静さを身につけている。

「家でもしっかりやれよ」

 美咲がいないとサボるってなったら本当に意味がないためわかっているだろうがしっかり兄として伝えた。

「りん兄は真面目だな。もちろん大丈夫だよ」

「それならいいがな」

 ほんと不思議だ今の琴音からは必ず合格できると思えてきてしまう。

「追い込めすぎないようにちゃんとやる。無理はしないけど全力でやる。それで私はできることを教わった。もう手が動かなくなることもないかな」

 前半はしっかりと学んだことを言っていた。だが最後の一言は不可解だ。

「手も怪我してたんか?」

 勉強のしすぎでケガとなれば影響が出ると悪いし休むように注意しないと。

「そんなわけないじゃん。手は万全。緊張でってこと」

 俺に手のひらを見せてきて説明をしてくる。

「そうか」

 電車の音はすぐになった。

「あ、もう行かないと2人ともまた!」

 走って電車の中に入る琴音。俺たちが別れの挨拶を終える前に扉が閉まった。

「もうしばらくはあなたの前で表情は見せません疲れました」

 琴音が見えなくなると一瞬で表情が消え怖く無の表情を見せる。

「お疲れ」

 こうして冬休みは終わった。あとは一年も残すとこ3ヶ月ってことか。

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