第214話 美咲の考え
「ふぅ食べ食べた!」
いつにもなく満足げな琴音。自分の作ったり料理のレベルの高さにうれしかったのだろう。
「食器は俺がかたすからお前らは休んだろ」
こんなちゃんと料理を作ってもらったことだし片付けは俺がすることにした。
「りょうかーい」
琴音はすぐに倒れ横になる。
「洗うもの多いので手伝います」
美咲は立ち上がりキッチンの方に行こうとする。
「いやいいよ。気にするな」
流石に量が多いからといって美咲に手伝わせるわけには行かない。彼女にはおせち料理を作ってもらったんだし。
「手伝います」
だが俺の言い分を無視してキッチンに行ってしまった。仕方ないか。
2人でキッチンで洗い物を始める。美咲が洗剤で磨き、俺がさすが担当になった。
「やはり兄妹の扱い慣れてますね」
いきなり褒めてきた。それも感心というよりは自分の方が劣っている悔しさからきている気がする。
「そりゃ琴音に関しては一緒にいる歴があるからな」
彼女の言いたいことは理解している。さっき琴音を慰めた時に上手くできなかったからだ。そして俺はすぐに路線を変えることができた。「そういういみではないです。私には琴音さんがどんな思いでそう言ったのかわからなかったからです。自分の料理とは違う意味ですごいと教えたら喜ぶと思ったのに…やっぱり人のことがわからずテンプレートだけで会話してきた私には限界があるようですね」
ガッカリする美咲。今まで、主にクラスメイトからは何を言っても肯定されていた。それで別に大丈夫だったからな。だが彼女はそもそも人のことを理解できない。だから返す返事はテンプレートばかり。正しいと決まったことでしか返すことができない。だから琴音のようなよみずらい人間はテンプレートでは対処が困難だと思う。
「美咲はお前を気に入ってるしそこまで気にする必要あるか?お前ができない部分は俺がやる。それでいいだろ」
琴音のことなら俺はよくわかる。癖がある部分も。そんな琴音は今の美咲を気に入っている。もし琴音に合わせてキャラを変えたら気を使わせたらと思われる。それなら、俺が美咲のできない部分を補う方が良いと思った。
「それでは何も変わらないです。私は笑顔すらも作っている。きっと琴音さんは、いや多くの人が気づくと思います。記憶がって諦めてましたがちゃんと向き合わないとです。それに彼女が好んでいるのは私ではなく過去のわたしであることをお忘れなく」
何か決心を固めたように思えた。これも一つの変化なのだろう。今までと同じで少しだけ何かが芽生えた。今の美咲からしたらいい一歩だろう。とはいえ、今回に関しては少し重く捉えているように思える。もしこのまま感情の変化が進めば再び薫さんが動き出してしまう。ここまで上手くやってきたのにいきなりの変化をあの人が見逃すわけがない。
「そう焦んなよ。理解してると思うが」
「わかってます。草加くんのことを利用させていただきます」
思ったより落ち着いてはいるようだな。それより草加って呼ばれるの久しぶりにだな。琴音といる間は名前で呼んでいたからな。
「姉さんに気づかれたらおそらく止めることができない。これが最後になるかもしれません」
それに薫さんのことも理解しているようだ。あの人は動きを見せたら確実に俺をさらに警戒する。そうなれば本当に美咲と会えない状況を作られる。
「わかってればいい。とりあえずなるべく隠密にな」
「了解です」
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