第19話 機械好きな少女

 いろいろなロボットが紹介された。未来的には単純な作業のほとんどはロボットが行うって未来も近いと思える番組だ。

「最後はここまでAIが発展した!ロボットがおこなうカウンセリングです」

 そして最後のロボットとしてカウンセリングを行うロボットの紹介になった。

「すいません。これ持っててください」

 俺にぬいぐるみを渡してくるとソファーから立ち上がりテレビに近づく。

「近すぎるだろ少しは…ったく」

 ほぼゼロ距離でテレビを見るのは目に悪い。すごく注目している内容とはいえ止めたほうが良いと思う。だが、今の椎崎は今までと集中力が違う。目を見開きシャーペンを強く握っている。近づくことすらできないほどの怖さを感じた。

 俺はもう画面見えないし後回しにしてた食器等を洗うとするか。

「あらゆるカウンセリングのデータから最適な情報を相手に伝えます」

 AIを使っているとしたらその情報量は人間では計り知れない量である。そこから生まれる答えも正解ではなくてもそれに近いものだといっていいだろう。

「機械的思考。感情が…ないから答えだけが…。それが必要な状況って…」

 ここからはよく聞こえないが椎崎がつぶやいている。

「カウンセリング技術はAIの答えをカウンセラーが照らし合わせその人に寄り添うことが大切だと考えられます」

 そしてテレビの方では機械をうまく活用することでよりその人のためになることが生まれると説明をする。互いの長所を生かす。それが現代における機械と人間の共存なのだろう。

「勝てない。そんなの」

 また何かつぶやいた。

「椎崎?」

 横からだからうまくは見えないが涙を流してるように見える。

「え、あ、すいません。あれ?倫太郎君?」

 ソファーの方を見たが俺がいなくて驚いている。

「いやこっちだから」

「あ、お皿洗っててくれたんですね」

「大丈夫か?」

「何がですか?」

「いや、その涙」

「涙?あー。多分凝視しすぎからですね。たいしたことないです」

 手で涙をぬぐう。

「それならいいが。少しは気をつけろよ」

「はい。少し気になっているものでしたので」

「それにしてもお前がそこまで好きだったとはな」

「同じ分野としていずれ敵になりますから事前に対策を練っておかないとですから。私の価値をしめすためにも」

 並んでいる日本語だけを見たらものすごく中二病くさいが誰もが楽を選んでいる中椎崎は自分の価値で効率に対抗しようとしているようだ。

「お片付けありがとうございました。もう遅いですし帰りますね。お見送りはいいのでそのまま続けてください」

「もう終わったから家まで送る」

 ひとりで入ってきたから問題ない気はするがぬいぐるみ多いから単純に心配になる。

「すいません」

 二つぬいぐるみを持ち椎崎の後ろを歩いていく。

「本当にありがとうございました。明日は何食べたいですか?」

「明日も来るんかよ。こっちは願ったりかなったりだが」

「あなたが私の魅力に気づくまで続けます」

 周りから人気があってそれにあう実力をもっている。それがゆえに誰よりもプライドが高いのだろう。ってかきいたことねーぞ好意をもってないやつから魅力に気づかせるなんて。

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