第20話 友の波は朝の生活をかえる

 ここ最近の朝は全く違う。挨拶を交わす程度だが高頻度で椎崎と家の出るタイミングが同じになる。朝だからというのもあるからだろうがその時はいつも以上に感情が抜けている。

 そして椎崎を見送り少し距離を開けてから学校に向かう。ここ最近は接触頻度も高く自然と話そうとすることもあるため意識していないといけない。

「りんくんおっはよ!」

 歩いてる途中でバッグで頭をたたかれる。

「おはよ。双葉」

「ムー。蒼葉でいいっていつもいってるじゃん」

 まだあって一か月もたってないなか双葉はもうおれのことを名前を略して読んできている。こつのコミ力を見れば椎崎に匹敵するレベル。それに椎崎と違って純粋であるから本当のあいつを知る俺からしたらあきらかに双葉が勝っている。

「いや呼ばないから」

「いつか必ず呼ばせて見せる」

 両手を握り覚悟を決めたようだ。内容はものすごくしょうもないことだが。

 双葉とはこれといって会話が続くわけでもない。俺と一緒にいたいからいるって感じだ。彼女の思考は理解できないがつけ話す理由もないためただ一緒にいる。それに椎崎のいってた仲良くしないほうがいい。あれも単にブランドを傷つけられた程度でいったわけでもないだろうしそこまで言う理由が気になる。

「双葉さんおはよう」

「…」

 同級生に声をかけられる双葉。しかし挨拶は返さず目をそらす。あいさつが整理しない変な空気が漂う。

「また教室でね」

 無理に話をつなげ走っていった。

「挨拶くらい返せよ」

「なんで私だけなんだろうね。りんくんもいるのに

 ここ最近は割と双葉に対して声をかける人も増えている。俺と一緒にいるという最大の爆弾をかかえている点を除けばいい人ではないかと広まり始めている。悪いのは双葉ではなく一緒にいる俺にあるらしい。いい方向に向かっているからいいのだろうが彼女のそれに対する態度は最悪である。基本的に俺を絡めた会話をしないと無視をする。今の挨拶も誰にしたかを明確にしてなければ俺と話しているときと同じテンションであいさつを返す。だが双葉個人への会話に対しては目をそらし一切返答をしない。

「今のも別に俺に挨拶をする気がないってわけでないだろ。普通の奴はそんな細かいとこまで意識して会話をしてないから」

「でもあの人りんくんを避けてたことあるから。そんな人と仲良くする気はない。りんくんに謝れば話は別だけど」

 プラスでとらえれば友達を大切にする人物なのだと思うが、マイナスで考えたら依存力が高すぎる。もう俺にはどうしようもない、ただ俺が距離を置く程度では双葉は折れずに何度も俺と接触を繰り返す。もっと明確に関係を断つ方法を見つけないといけないのかもしれない。

「せめて挨拶だけは返してくれ。気持ちはうれしいがお前が中間にいてくれた方がみんなとの仲の回復になるだろうから」

「あ、それもそうだね!わかった!これからはそうする」

 ただただ純粋であるから俺の言い分はちゃんと聞いてくれる。それでもやはり俺という壁をどうか取り除きたい。あんましたくないが頼ったほうあいいかもな。

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