第21話 双葉の才能

「双葉さんおはよ」

「おはよ!!今日も暑いね」

 教室につくと双葉にまた声をかけてくる生徒が現れた。俺の言い分を聞いてくれたようで元気に接している光景がうかがえる。それを目の前で見守るものすごい変な状況でいるのだが…。

「双葉さんって部活とか入らないの?」

 双葉は転校して今日まで学校に関係することに関して一切触れてきていない。部活も入ろうとするそぶりがない。

「そうだな。もう少し学校になれたら入ろうと思ってるんだ。絵描くのは好きだから入るなら美術部だと思うよ」

「そうなんだ」

 いい感じに会話が続いているようだ。双葉は誰とも仲良くできるタイプみたいだな。

「よかったら双葉さんの絵見せてくれないかな」

「うーん。あまり見せたくないんだ。ごめんね」

「そっか残念。あ、また話そうね!」

 話を急に終え教室を出ていく。その方向には椎崎がいた。

「あの人に調査させられたのかな?」

「考えすぎだ」

 椎崎がきたら一緒に話しかける。これは自然の摂理のようなもの。双葉を仲良くしたくても優先は椎崎なのだろう。そのせいで椎崎の近くいないと仲間から外されると思ってしまっている。あいつ自身その程度で関係を終わらせるようなやつではないが。

「そっか。危なかったからいいけど」

「危ない?」

「絵のこと。うまく話題を作るためにいっちゃったからさ」

「そんな恥ずかしがることもないだろ」

 絵がへたくそって自覚があればそもそも絵の話題にもっていかないだろう。どちらかといえば絵に自信がない程度だろう。

「そういうわけでもないんだ。ちょっとまって」

 バッグを中をあさりだす。自分絵の描いたノートを出そうとしているようだ。人に見せたくない絵。それも恥ずかしさとかではないと来るとすごくきになってくる。

「これ」

 ノートを差し出してくる。その手は震え目からも恐怖を感じ取れる。

「そんな無理に見せなくてもいいぞ」

「大丈夫。りんくんは今度家にも招待したいしそうなったらどうせばれるから」

 今の空気で初耳なことを聞いた気がするが詳しくは後にしよう。

「そうか」

 ノートをうけとる。表紙には希望と書かれている。ポジティブなテーマであるが幻想的な絵になりそうだな。1ページ目を開く。そのページはただ黒く塗りつぶされている光景だった。

「そのページは気にしないで。その次から」

 一ページ目に触れる前にすぐさま次のページを開かせようと促される。

 次のページを開く。黒の鉛筆で塗りつぶした形での白黒絵。学校の屋上が描かれている。左上には絵のタイトルあ書いてる。作品名は最後の夕日。

「これのどこがダメなんだ?独創性あってすごく上手いと思うけど」

「よく見てみて。フェンス」

 フェンスの方には黒い影がフェンスの越しに書かれ、白い影はフェンスの手前でたっている。

「この陰になんか意味あるのか?」

 彼女は目を細め、歯を強く噛みしめる。

「私の絵って余計なもの書いちゃうんだよね自然と。私の絵は黒いものが中心の物は触れる物体。白が中心の物は無機物や触れないものを表現している」

 説明を受けもう一度見返す。校舎などはたしかに窓枠などは白いが黒が中心になっている。そうなると黒い人は物体。白い人は影だと思われる。つまり。

「なるほどな」

 こいつの絵は幻想的な絵ではなく誰かの終わりを表現している。俺みたいに気づかれなければいい絵で終われるが何枚も見れば気づくだろうしその光景が明らかなものもあるのだろう。

「嫌いになった?」

「別に。余計な要素はあっても、うまい絵ってだけだろ」

「そっか。ありがとう」

 ただ一つ疑問が一つ残る。こいつあ書いたものは黒が中心の物は物体を意味している。なら、1ページ目はの黒く塗りつぶしていたものは何を意味していたのだろうか。すぐに隠そうとするの踏まえると全く関係ないともいえんだろうな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る