第22話 男版椎崎
二つのクラスが合同で行う体育。この中で二人一組で行う競技の時間は地獄だ。俺を誘ってくる奴はいない。男の人数が偶数だから余った二人がペアになるで解決する。だが、そういう場で残るやつは運動神経が良い人は少ない。よって必然的に他よりも遅れ晒し者にされる。
「組もうぜ」
周りだんだんとペアが決まっていく。案の定俺に声をかけるやつなど現れない。
「一緒にどうだ?」
肩がぶつかる。
「なぁ」
またぶつかる。いやこれは叩かれてるな。
「俺に言ってんのか?」
振り返るとものすごく輝く笑顔を浴びせてくる。
「大和。まじかよ。そいつ問題児だぞ」
隣にいるやつがいちゃもんをつけてくる。大和という名は俺でも知っている。ほとんど分野で椎崎に一歩劣っている優等生だ。
「今日は草加と組むから」
俺の返事を待たずして組むことが決定した。
「何かあったらすぐ呼んでくれよすぐ助太刀すっから」
「わかった」
俺に対する温度差がすごい。大和は冷め切っている。というより噂を気にしていないように思える。もう片方はガッツリ噂を信じて行動してる。
「じゃあよろしく」
「お、おう」
完全に大和ペースで話が進んでいる。
準備運動に背中合わせで腕を組み伸ばす。
「何が目的だ」
「目的?考えすぎだ。俺はただお前が面白そうと思っただけだ」
すべてが上から目線なのがものすごくむかつくこいつとは仲良くなれないだろうな。
今季はサッカーらしい。しばらくは二人ペアで練習をする。
「好きなところうっていいぞ」
そういえば大和はサッカー部だったな。それであんな自信満々だったのか。
「ほらよ!」
強めにけるだがしっかり胸でボールの力をやわらげ軽くリフティングをする。
「いいけりだな。さすが喧嘩好き」
強めでけり返してくる。
完全に挑発行為だ。俺を見極めようとしている。俺はサッカーが得意ではないあいつみたいにきれいに止めることができない。そんな俺が返す方法はただ一つ。
「おら!」
そのままボールを蹴り返す。ものすごく痛い。
「おもしろい」
けりのモーションに入る。バカだろ。これけり返して来たら受け止められねーぞ。
「なーんてな」
構えた足を上にあげる。威力の高いボールは空高くあがる。
落下地点に向かう大和。ボールをそのままキャッチする。
「たいしたものだ。お前技術はまだまだなのだろうがサッカー部に向いてるかもな。喧嘩なんかやめてサッカー部来いよ」
さらに挑発をしてくる。化けの皮をはがそうということだろう。これに乗れば悪い噂を広めてエンドってこんたんだろうな。
「興味ない」
「だよな。やっぱ噂は当てにならんな」
笑顔を見せてくる。
「へたなまねするなよ」
「安心しろお前が自分の口で真実言うまでだまっててやる。だから交換条件としてほかの時間でもペアになってくれ。下手に自分を見せようとしないし普通に運動神経いいし気に入った」
好感はもたれた。常にあいつペースだったのは気に食わないが。
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