第六話 俺を肯定するのは間違っている

「倫太郎君ありがとう!」

 双葉を送った俺。遅刻ギリギリだったがなんとか時間内にたどりつくことはできた。

「職員室は左をまっすぐな」

「わかってるよ。それじゃ。またあとで」

 双葉とわかれる。

 教室に向かうとちらちら俺が女子生徒と歩いてたという話を耳にする。途中で解散するのもよかったが任された以上学校まで案内する必要がある。どっちにしろ双葉側が何も言わなければたまたまって話で解決できそうだな。

 教室に入り頭をふせる。あとは朝礼で双葉が自己紹介がうまくいけばゲームクリアだろう。あとは何もなかったかのようにして双葉が話しかけてきても無視をすればいい。

「えー。急なんだが転校生がきた」

 先生からの一言で教室がざわつく。男子はかわいい女子かな。女子からはかっこいいイケメンかなと。男ども驚け。女子だ。

 扉を開けて教室に入る双葉。手が震え緊張がわかりやすく表れている。

「あの。双、ふたば。蒼花です。よろしくお願いいします」

「ねぇあの子じゃなかった?」

 教室にはいり自己紹介を始めたときクラス内のほとんどは彼女についてよりも俺が一緒にいた生徒のほうに注目が集まってしまった。

「私。今日はひ、ひと、1人で学校いけなくて遅刻しそうだったんですよ」

 緊張しすぎてか俺と決めた「双葉の手柄にする」のついこうを忘れてやがる。この感じ想定通りやばいな。

「その中。倫太郎君が助けてくれて」

 空気が変わりだす。新しい子でなく倫太郎を知らない子と判定された。俺の考えていた排除ではなく、俺の悪さを教えて気を付けるよう促す方向になりそうだ。それなら問題ない。本人は照れている。

「そんな優しい人のいるクラスでよかったです。これからよろしくお願いします」

 最後は緊張も照れも抜け朝に見た元気さと笑顔を見せた。

 

 休み時間は警戒を怠れなかった。教室にいればすぐさま話しかけようとしてくるためトイレへ逃げる。それでも彼女は近くで見張って出てくるタイミングで話しかけようとしてくる。ほか女子から何か聞かされたようだったし俺のことについては把握しているはずなんだろうが、接触しようとしてきている。そのせいか誰も彼女に話そうともしない。

 仕方なく外から回り込んで教室に入ることにしよう。

「あ、倫太郎君!!」

 げ、回り込んだの読まれたのか。

「どうした?」

「もう、なんで逃げるの?」

 朝と同じように話しかけてくる。警戒はされていないようだ。

「話聞いたんだろ?」

「それで?」

「はぁ。俺とかかわったらクラスに溶け込めないだろ」

「その程度で恩人を見捨てないよ。少なくとも噂程度で人を嫌いになるような人にはなりたくない」

 この言葉には元気さはなく真剣だ。彼女の強い意志を感じる。そして溶け込む気もなさそうだな。むしろ周りに流されるような人たちを敵に回すような発言だ。

「知らないぞ」

「大丈夫。私もう流れされないから」

 双葉がいいなら俺も向き合ってやらないとな。今のところ双葉と仲良くしようとする人はいなさそうだし。たった1人でも味方はいたほうがいいだろうからな。

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