第40話 兄妹
食い物の奪い合いを琴音としているときだった。
「いいですね兄妹」
いつもの余裕もなければ素の姿でもない。どこか弱弱しい声が聞こえた。
「どうした急に」
こいつは1人だと聞いている。兄妹に感情移入することもないだろうに。
「私は1人なのでこういうのしたことないんです」
まただ。こいつは一人っ子ともいわなければ兄妹がいないとも言わない。
「美咲さんみたいなお姉さんがいるなら優しそうだし楽しいとおもうなぁ。あ、でも妹なら少しドジだしかわいいんだろうな」
琴音が椎崎が姉妹で会った場合の妄想を繰り広げる。
「琴音さんこそ妹に欲しいです。倫太郎君は…どっちでもいいです」
椎崎も本音をぶつけてくる。しかも俺にいらないダメージを与えるのも忘れなく。
「こんなかわいげのない姉妹はいるか」
「・・・ですよね」
カウンター攻撃をしたつもりが思っていたよりダメージを与えてしまったようだ。落ち込んでしまった。
「琴音さん。今日うちに泊まりに来ませんか」
さらに追い打ちかのように提案してくる。
「あ、いいですね。空気のよめない兄は放置で」
「勝手にしろ」
妹が奪われたなんて思っていない。本当だから。
「倫太郎君も妹にはそういう顔をするんですね」
なんか俺だけ敗北した感がはんぱないのだが。
それにしてもさっきから感じる椎崎の怖さはなんだ。
「ごちそうさまでした」
口論はあったがおいしくおなかいっぱい食べることができた。
「片づけは私するからりん兄と美咲さんはゆっくりどうぞ」
琴音が食器をもっていく。
「優れた妹さんですね」
「俺のじま、いやいい。誰よりも努力家だからな」
シスコン発言は黒い椎崎を表に出させるため自粛せねば。
「あなたが私に適応できたのも理解できました」
俺の妹以上に突っ走り女子を俺は知らない。妹につい来れれば大抵の女子への対応はできるだろう。
「ちょうどいいか。お前に一つ頼んでいいか?」
「なんですか?」
「俺の専門外の悩みを琴音は持っているお前ならその悩みの解消もできるだろうからよ」
進路については俺よりも椎崎の方が適任だ。誰よりも頼りになる存在だ。
「仕方ありませんね。今日はお世話になったのでその願い聞いてあげます。感謝してください」
今日助けてやってよかったぜ。これで妹の進路は解決するな。
「ということで。私は準備するので帰りますね。30分たったら家に呼ぶように伝えてください」
自分の部屋にもどっていく。これいでいったん落ち着いたわけだ。
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