第41話 琴音の秘密
琴音は美咲の部屋に入る。
「うぁー。すごくかわいらしいお部屋」
外観もちろんベットの上に並ぶぬいぐるみたちに感激する。
「ほら座って下さい」
はしゃぐ琴音に圧をかける美咲。
「あ、はい」
可愛さを隠したいばかりのその圧は琴音の動きを封じる。
「!」
座ろうとする琴音は左足に気を使いながら丁寧に座る。
「大丈夫ですか?」
「うん。今日はさすがに暴れすぎちゃったんですよ」
「それならいいですが」
紅茶とクッキーを用意しテーブルの上に置く。
「うわぁおいしそう」
「せっかくですし女子会みたいなようなものをしましょうか」
「うん!」
琴音のかわいい笑顔の洗礼を浴びた美咲は顔をそらし冷静にさせた。
「あなたのお兄さんってどういう人ですか?」
「えーとね。優しい人です。今はその。いろいろあってひねくれた性格になってますけど」
「あそこまで嫌われ者になって笑顔で入れた狂人ですけどね」
「それを知ってて仲良くしてくれる人がいるのはうれしいです」
「それはないです」
家が近くなければ出会ってすらいない。美咲にとって倫太郎は隣人なのである。
「とにかくりん兄が元の姿に戻ろうとしているのは美咲さんのおかげです」
「あの人はなんやかんや気を使わなくていいので。あの人に嫌われようが盾にできる材料は多いですし」
「なら、美咲さんにだけは特別に教えてあげます」
部屋に二人しかいないが美咲の耳に近づき倫太郎の秘密を一つ教えた。
「なるほど。それはいい材料ですね」
「ご自由に使ってください!」
「なら、私も」
今度は琴音の耳元でささやいた。
「ほんとですか!ありがとうございます!!」
二人はこうして倫太郎限定の腹黒コンビが誕生した。
「あの美咲さん一ついいですか?」
「はい?」
「ほぼ0点としてりん兄と同じ高校に通うことはできますか?」
「無理とはいいませんけど。私が通う学校なめてます?」
「そうなんだよなー。りん兄と一緒にいれる時間をながくするために同じ学校にしたいけどさすがに難しいですよね」
「不可能ではないので頑張ってください。あなたは運動センスがあるので大丈夫ですよ」
その言葉には嘘も偽りもない現実。だからこそ琴音の心にも強く響く。その結果琴音が美咲に抱き着いた。
「え、」
「ありがとう。私頑張る。絶対。乗り切って見せる。こんなケガ忘れるくらいに」
琴音が何があっても話さなかった足のケガのことを打ち明けた。今彼女がどんな気持ちで抱きしめているのか理解でき程にぶくない。美咲はケガの言葉だけは聞かなかったことにした。
「寝ますか」
「そうだね」
琴音との一夜。これにて終了。
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