第92話 彼女の行く末

 さてと周りのきつい視線を受けながら堂々と歩く姿に誰しもが驚いているだろう。むかつくだろうな。ここまで堂々とされて。

「ほんとどこいったんだよ。走って逃げたのは見たのに」

「学校の外出たのかな?」

 どうやら椎崎は行方不明なようだ。あいつなら誰かが探してくれるだろうな。仲間はいっぱいいるし。外に出たのなら見つけるのが相当難しくなるが。

「よく堂々と歩いていられるなあいつ」

「あいつのせいで椎崎さんいなくなったていうのに」

 行方不明か。探しに…。いやダメだ。今探しにいってしまえば意味がない。耐えるんだ。何かあったら俺のせい。事故にあってないよな。追い詰めすぎてもっと重い何かになってないよな。

「あいつのせい」

 周りから聞こえるその声がだんだん重く感じてくる。椎崎と俺の関係をたつために行ったことだ。間違ったとは思ってない。だけど。胸に刺さる。

 あー!!

 これが本当の最後だ何もないことの確認だけだ。見つかったら見られないように退散する。

 走りだした。誰かのためじゃない。俺が安心するためだ。

「屋上の鎖」

 走っているとき聞き覚えのある声が聞こえた振り返ったがひとにまぎれてしまいわからない。屋上の鎖。まだ誰にも見つかっていないのは誰もいかないようなところにいるってことか。それなら屋上はあり得る。誰も予想しない場所だ。それに確認する価値はある。


「あの子は候補でなくほぼ確定かもね。もっといい主人になってね。倫太郎くん。さてとお母様に報告に行こうかな」


 階段を駆け上がっていく。屋上の扉についた。閉ざされていた鎖が外れていた。鍵も開けられている。確実にここに誰かいる。確認したら気づかれる前にこの場を離れて大和にでも伝えるとするか。

 扉を開いた。初めて来た屋上太陽が明るく照らす。結構熱い。だがそこに椎崎の姿はない。ここでないのか。いや堂々といることは少ないだろうし屋上を探してみるとするか。

 屋上に入り扉を閉める。

 隠れるところといっても範囲は限られている。そこを探して見つかれなけばここでないってことだろうな。

 少しづつ扉から離れていく。

 その一瞬の隙を少女は逃さなかった。走る音が聞こえた。後ろを振り返ると誰かが扉の方に向かってる。太陽のせいではっきりと顔を見ることはできないが女子生徒なのは確定だ。椎崎なのだろうか。

「はぁやった。拘束できた」

 扉の前に座るとペットボトルから飲み物を飲む。すこしづつ近いていく。だんだんとその顔がはっきりとしてきた。

「何してんだ?」

 そこにいたのは目が少し腫れた状態の椎崎美咲だった。

「あなたの拘束です」

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