裏の彼女を知る俺の話

第１１話 深まる

　一発目でホラーアトラクションに入ることになった。

「おいまて。どこでもいいとはいったがいきなり選ぶか？」

「あら、怖いんですか？」

　俺をあおってくる。どこでもいいといった手前ここで引き下がるわけにもいかない。

「お前がいいなら行くぞ」

「余裕です」

　ここのホラーアトラクションはトロッコに乗って恐怖体験をするらしい。人形などだからお化け屋敷と比べたら怖くはないだろう。

「でも、少し待たないとですね」

　店員が30分待ちという看板を持っている。

「そうだな」

「健太郎君って結構こういうの慣れてますよね。初めて家に入ったときもそうですが全く緊張しませんですし」

「妹がいるから。年も近いし女子と二人とかも気にならないな」

「妹さんですか。いいですね。健太郎君みたいなお兄さんがいてうらやましいです」

「お前はどうなんだ？」

「おね…私は1人だけです」

「一人っ子か。それも楽だよね」

「そうですね」

　何か話しづらいオーラを感じる。お姉ちゃんといいかけそうだったし訳ありって感じか。話題を変えないと。

「この遊園地にはいつもきてるのか？」

「はい。大人の人が厳しい家計で唯一ここだけは許されていました。なので大好きです」

　…こいつは地雷女か。何を話してもいい空気を作れない。終始暗い空気が漂っている。

　今の発言からしても家族の話をするなタブーなようだな。話題を家族が確実に介入しない話題にしなければ。

「あ、すいません。電話してきてもいいですか？」

「いいよ。ならんでてやるから」

「ありがとうございます」

　椎崎はいったんはずれ人気の少ないところに向かった。　

　あいつの好きなところでなら少しは気づくことがあると思ったが余計に不思議な存在になったな。どこまでが本気でどこまでが演じているのかもわからない。ただ、ものすごく苦労人なのは理解できる。感情が無の場面が多いのもそれと関係しているのだろう。

「え、見てたんですか？違います。彼はお隣りさんで。今日はその特典を…。申し訳ございません。気を付けます」

　電話が切れる。その目からは涙が流れていた。

　だいたい半分くらい列が進んだ。

「ごめんなさい。お待たせしました」

　椎崎が戻ってくる。

「もうここまで来たんですね。楽しみですね」

　さっきは真反対に元気な様子をうかがえた。

「どうしたよ」

「私はいつも通りですよ。近づいてきて興奮してるんだと思います」

「ならいいが」

　いつも通りか。学校で見せる姿ともどこか違うし一応素の自分ってことなのだろうか。

「それより、健太郎君手ホラー得意ですか？」

「得意ってわけではないが普通に行ける」

「あの、私苦手なのでエスコートお願いできますか？」

　涙目を見せる。

「は！お前得意だから来たんじゃ」

「そんわけないじゃないですか！私いままで怖くて入ったことなかったんですよ。あんな余裕そうにしてたから行けると思ったんですよ！」

　こいつ苦手じゃなくて大嫌いだったのかよ。まぁガチ勢としては入ったことのないアトラクションがあるってのは許せないだろうな。

「どんなに叫んでも見なかったことにしてやる」

「絶対ですよ！」

　苦手なものは意外と身近にあるものだな。

「私は人じゃない。主人の命令はぜったい」