第164話 双葉の居場所
電車はいがいと長いひと時だった。双葉がずっと話してくれたから止まることがなく楽しかった。疑いの目はまだかすかに感じたが少しは信用してもらえたような気がする。
「次の駅だから」
「了解」
ようやく目的地の駅につくようだ。
ついた場所は少し田舎だ。自然が豊かでとても住むやすそうな。双葉がこういう場所を選んだことには驚いている。
「少し歩こうか」
「了解」
まだ目的地がどこなのかは話してくれないようだな。
歩き進めると電車の中とは状況が変わっていた。双葉はとくに話すこともなく景色を楽しんでいる。どこかなつかしくも悲しい感じがした。思い出の場所なのだろうか。
「あ、ここの公園!!春になるとさくらがきれいなんだよね!」
ようやく話しだした。そこは小さな公園。すべりだいとブランコだけがあり太い木が並んでいる。
「そうなんだ。いい場所だな」
「うん!!ここね。よく遊びに来てたんだ」
「そうか。どうりで」
「どういうこと?」
今の彼女の一言でこの場所がどこなのか理解できた。双葉の地元のようだな。
「お前がこんな自然豊かなところを選ぶと思わなかったからな」
「たしかにそうだな。転校する前まで住んでた場所なんだ。私ここが大好きだからりんくんを一回連れてきたかったんだ。もっと奥に進んだらショッピングモールあるからそこが目的地」
純粋な笑顔がみえた。目の輝きからも彼女がこの場所をどれほど気に入っているかがわかる。
「双葉の思い出のちか。結構楽しみだな」
「ほんと!よかったー」
今度はほっとしている。今日は感情豊かだなこいつ。
さらに進んでいく。
「ここのおもちゃやさんはよく通ってたんだー」
双葉は何か思いだの場所につくたびにその場所を紹介してくれる。だんだんと不安な様子はなくなり楽しんでいる。元気はいつもと変わらないが今日はいつも以上にテンションが高い。
「なつかしいな。半年しかたってないのに」
「俺も今の場所に住んでからは地元に帰ってないからな。その気持ち少しわかるな。今帰ったら俺も懐かしく感じると思う」
俺は部屋にいるの好きだったから双葉みたいに外の思い出は少ないけど。それでもまぁ妹と走った道とかみたらなつかしくなるんだろうな。
「ここから…」
また不安の顔が見受けられた。緊張が高まっている。
「大丈夫か?」
「う、うん。目的地にいくためには超えないといけない場所だから頑張る」
いっていることはだいぶ重そうだな。こんなに思い出がいっぱいの場所でも嫌なところはあるのだろうな。
道を進んでいくと遠くに学校が見えてきた。すると双葉は俺の腕を強く握ってくる。その手からは震えを感じれた。
「前にいた高校か?」
双葉が好きな場所なのに転校してから一度も来ていない。それだけでも少しは思っていた。だが学校を目の前にしてこの震える感じ学校で嫌な思い出でもあるのだろう。転校したのも円満ってわけでないとおもった。
「ここが学校なわけないじゃん。私を壊した牢獄だよ」
どうやら俺が予想できるものとは全く違うのだろうな。
「電話のこととかもあるし。りんくんは信用できるしここで何があったのか話そうと思ってここを選んだの」
この感じでその話をきくのか。狩る気持ちではいられないな。
「わかったちゃんと聞く」
「ありがとう」
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