第139話 元の生活そして新たな出来事

「おはようございます」

 家をでると美咲と出会う。休みの日のような距離感はなくなりいつも通り感情を表にださず俺のことを他人のようにあしらっている。

「おはよ」

「ついてこないでくださいよ」

「わかっている」

 いつもどおり。少しは変化があると思ったが何も変わらない。このままいつも通り過ごし夜になったら料理だけを作ってくるのだろう。これが変わらない日常なんだと改めて感じてしまった。

「そうだ。今日の放課後は暇ですか?」

「暇だけど」

「なら買い物手伝ってください」

「了解」

 これも重い荷物を運ぶために俺が都合がよいからという理由だけだろう。普段予定はないし付き合うことにする。少しでも美咲を元に戻すためのきっかけを見つけるためにも。

「ならお願いします」

 お礼を言ってこないところとか細かい部分が美咲らしくない。

「集合場所は?」

 学校で集まるのは難しいためあらかじめ目的地を把握しておく必要がある。

「学校裏から進んでいくとあるデパートわかりますか?あそこでお願いします」

 美咲としては珍しい場所を指定してきた。いつもなら帰り道に通るスーパーや商店街で買い物することが多い。アパートからは真逆の方向だし何を買うのだろうか。

「わかった。ホームルーム終わり次第向かう」

  美咲はそのまま学校に向かっていった。俺はいつも通り彼女のことをある程度みおくってから遠回りをして学校に向かう。


「りんくんおはよ」

 ある程度進んだところで双葉とあった。

「おはよ」

「ごめんね。疑ったりして。冷静に考えたらりんくんのことを椎崎さんが真面目に考えるわけないよね。りんくんのことを考えるのは私くらいだと思った」

「理解してくれたならよかった」

 いいかたは少し悪いとも思えたが今は俺と美咲の関係がばれないことを優先したいためあえてつっこまない。

「でも、あの誰にもプライベートを見せないで有名な椎崎美咲が私たちなんかと一緒に遊ぶなんて驚きだよね。狙いは大和君かな?」

 美咲が俺たちに付き合ったのは大前提としてあいつの一番好きな場所を選んだことだろうな。ほかに考えられるとしたら大和も俺も美咲に憧れを持っていないからいつも一緒にいる人よりもステータスが関係なく美咲という同じ人間として見ているからだと思う。

「そうかもな」

 本人が疑惑を出たときに全力で否定していたからその説は薄く感じれる。

 

 2人で学校に向かっていると「ピロロ」と双葉の携帯が鳴りだした。

「あ、電話だ。ごめん」

 一度立ち止まり携帯を耳に当てる。

「もしもし」

 少し間を開け双葉が驚いた表情を見せる。

「なんで知ってるの?私・・・ごめんなさい。今登校中で連れもいるのでまたあとでいいですか」

 双葉はお礼をいい電話を閉じた。

「ごめんいこっか」

 目が泳いでいる。まるで全ての色が抜け落ちたかのように顔が青ざめる。手は震え電話一つで彼女がひょう変したことがわかる。

「大丈夫か?」

「余裕だよ!」

 彼女の見せる笑顔からは今にでも泣き出しそうな顔にも見えた。

「なにかあったら」

「わかってる必要になったらちゃんと相談する。今はそっとしておいてくれるとうれしいな」

「そうか。わかった。ならきかない」

 双葉の電話の相手は双葉に恐怖を与えるほどの人物なのだろう。今は何もせずそっとしておこう。


 

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