第137話 帰りの準備
それぞれデザートを頼んでしめにはいった。俺はプリン。美咲はショートケーキ。大和はコーヒーゼリー。上野がティラミス。双葉はジェラートを選んだ。
「どれもおいしそう」
双葉が目を光らせる。
「一口いりますか?」
自分が口に入れる前に美咲が差し出す。
「そういう意図でいったわけじゃないんだよね。ごめん」
「そうですか。欲しければいってください。私は大丈夫ですので」
美咲らしい優しさだな。普段なら絶対しないだろうな。
「夜遅いけど二人は帰り大丈夫か?俺ら家まで送るよ」
大和が提案をする。たしかにもう暗いから一人で帰るのは心配だな。美咲は俺と帰れば安心だが同じアパートだとばれる可能性もある。双葉も道でいえば俺らと同じだったな。
「双葉は俺と同じ方向だから俺が連れて帰る。美咲はどうする?」
「私はここから商店街の方に向かっていく方向です」
「なら私たちと同じだ」
「倫太郎に二人をまかせるのか」
「外套もちゃんとあるから大丈夫だろうよ。美咲も一緒に帰る」
へたに大和たちが一緒になると俺と美咲が一緒のアパートであることがばれるリスクが格段に上がる。それを回避するためにもなるべく最小限におさえたい。
「ならお言葉に甘えて倫太郎君たちに混ざりますね」
「なら頼んだぞ倫太郎」
「おう」
そしてデザートを済ませて会計を済ませて帰ることになる。
「じゃ、三人ともまた学校で」
「今日はありがとうございました。今後とも何かご一緒することになったらよろしくお願いします」
「もちろん。椎崎さんと大和さんタッグほんと黄金だからもみたい」
「黄金は言いすぎだろ。俺も楽しかったまた」
「大和君。上野君またね!」
暗い中歩く三人。
「私は文化祭でほとんど絡んでなかったしちゃんと話したのって学食いらいだっけ」
たしかに双葉は実行委員というわけでなかったし美咲とはほとんど話していなかったな。学食か。俺と一緒に食べる程度のくだらない話題で口論が始まった日か。
「そうですね」
「あの時はほんとに面倒な人だと思ったんだよね。仲良くしたい程度であんなに詰め寄ってきて。しつこかったし」
それは双葉も同じだった。最初は普通の友達の距離間だったはずなのに美咲が近づいたせいでだんだん詰め寄ってきていた。
「いいじゃないですか。私は好かれなかったことなかったので。私をほかの方と同じように見てる草加くんが気になっただけですし」
捏造がすごくうまい。記憶がなく限られた情報だけで完璧な受け答えだ。
「たしかにりんくんっていい人なのにほかの人と仲良くしているの見たことないな。今は文化祭事件があるから仕方ないけど」
「少数精鋭でいいだろ友達は」
「それもそうか」
「すいません多勢に無勢で」
美咲は基本的には好感度をあげるために言葉をしっかり選んでいるのだろうがときどき鋭い言葉をぶつけてくる。そしてそういう時は表情がないか不敵な笑みを見せる。
「椎崎は全員が求めるからしかたないだろ」
「ほんと意味わからないくらい」
「あ、私このへんで大丈夫ですもう近いので」
話に夢中になっていたせいかもう家の目の前にたどり着いていた。
「そうか。それじゃ」
ここからは双葉と二人きりになった。
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