第134話 観覧車を終えて

 観覧車に乗っている俺たち双葉と美咲はぐっすり眠っている。

 ゆっくりとした回転は、まるで時が止まったかのような静かなひとときを与えてくれる。風が頬を優しく撫で、ゴンドラの中からは遠くに広がる街の景色が、まるで宝石のように輝いて見える。高く舞い上がったその瞬間、視界には広がる空と大地だけが存在し、すべての喧騒から解放された静寂の中に包まれる。

 だがそんな時間も終わりをむかえようとしていた。

「そろそろ二人起こすか。おい双葉。そろそろ起きろ」

 観覧車は止まることがない限られた時間で降りる必要がある直前だと遅れてしまう可能性がある。

 双葉に声をかけるが起きるそぶりをみせない。それどころか肩から頭をおろして俺の膝に乗せてきた。

「椎崎様」

「もうすこし」

 美咲の方は意識があるようだが起きようとはしない。

「どうします?」

「俺が持っていくよ。倫太郎は双葉を頼む」

 大和がせまいところで美咲を持つ準備を始めた。俺もうまくおぶれるように体制を作った。

「お前ら先に降りてくれ。俺たちは後から持って降りるから」

「わかりました。荷物もらいます」

「俺も」

 木佐山が美咲のバッグを。上野が双葉のバッグをもった。

 そして扉があき俺たちは降りた。

「ほら双葉終わったぞ」

 おぶった双葉を許した。

「ん、んーあれ?」

 ようやく起きた熟睡していたようでだいぶ眠たそうだ。

「おはよ」

「りん君の背中…!!ごめんおろして」

 いわれた通りおろした。彼女は顔を真っ赤にしていた。我に返ってよっぽど恥ずかしかったのだろう。

「あ、あのありがとう」

「どういたしまして」

 

「椎崎さんもそろそろ起こきないと」

「うーん。倫太郎君もう少し休ませてください。ちゃんとゆうし」

 待て待て待て!!記憶が消えてるから少し油断していた。美咲の記憶はカギをかけられて思いだせていないようなものだ。つまり、無意識になら出てきてもおかしくない。そして、今一番聞かれたらまずいことを言おうとしている。

「椎崎様はダメですね。もう少しそのままでよろしいですか?」

 そこに木佐山が美咲の口を押えて遮断をしてくれた。

「わかった。でも倫太郎くんって。お前」

「椎崎様は昔にもお友達に倫太郎という方がいました。ごはんを一緒に食べるくらい仲が良かったそうです」

「そ、そうなのか」

 木佐山がいいフォローをしてくれた。この一瞬で状況判断と回避方法を思い浮かぶ鋭さはさすがだ。

「りんくんほんと!!」

 双葉が俺につめよる。

「俺が椎崎と仲いいわけないだろ立場とか人気とか考えろ」

「それもそうか」

 納得されるのはむかつくがこれが現実だ。草加倫太郎というブランドと椎崎美咲のブランドを並べたら確実にありえない組み合わせだ。

「わるいな」

 近づき小声で木佐山にお礼を伝えた。

「あの人のプライバシーを守るのも私の役目です。それより、残ってはいるようですね」

「俺もわからんがそのようだな」

 俺と木佐山は少しだけ美咲に残る記憶について理解をした。

「とりあえずファミレス向かうか」

「私もおなかすいた」

 観覧車は2人寝てたしそこまで話してないからあっという間に終わったな。

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