第211話 妹と美咲

 三人で雑煮を食べた。俺と琴音が作ったってこともありものすごく不安だった。美咲が寝ているとは言え、ほとんど料理をしたことの俺らが作るなんて無茶すぎた。俺らが食べるならまだしも美咲が食すのだから緊張感が高いのだ。

 しかし美咲はおいしいといってくれた。ほっとしてした俺たち。雑煮は無事に間食することができた。

「お二人も料理ができたんでしたね。いがいでした。今後は自炊でもしてください」

 半分嘘で半分ほんとだろうな。自分が料理をしなくなれば楽になるから現実的にはいいことになる。だが、今の美咲は自然と料理を作ってしまう。

「でも、美咲さんが作ったほうがよかったね。私たちじゃ普通のおいしさだったし」

 琴音が落ち込んだ様子をみせる。俺らが美咲の味に慣れすぎて普通では満足しないしたになっている。自分が作ったものがどれほどよかったとしても美咲のご飯が食べたいのである。

「確かに私が作ったほうが食材の味をいかしてもっとおいしい雑煮が作れたかと思います」

 自身気に言う美咲。こういう自分のことを過小評価しない姿はさすがだ。

「ですが、私にはこの料理はできません」

 つらそうに笑顔をみせてくる。美咲でも作れない料理があるとはいがいだ。この感じからして、俺らみたいなクオリティの低い料理とは言ってるわけでない。そもそも美咲はそういうことを言うような人ではない。

「二人で作ったですよね?」

 質問をかけてきた。

「そうですけど」

 琴音が返答をする。

「私は1人で料理してるので2人みたいに兄妹の味を作り出すことができないです。だから私の物とは別ですが、本当においしかったです」

 美咲が褒めている。琴音も俺も正直驚きを隠せなかった。美咲は寝ていたから当然俺らの料理を見たわけでない。なのに、二人で作った味を強く感じてもらえたようだ。美咲には作れない味。これは兄がいないとか弟がいないとかそういう問題ではないのだろう。美咲には作れない味というのもどこか納得してしまう。

「美咲さんってすごいですね。私たちの料理にも真摯に受け止めてくれて…うれしいです」

 琴音が美咲に飛び乗りぎゅっとする。美咲が顔を赤らめる。こういう美咲の姿は普通にかわいい。

「あの、離れてもらえると」

 頑張って引きはがそうとする美咲。しかし、琴音の力が強く中々離れようとしない。その琴音の表情はものすごく笑顔。本当にうれしかったのだろう。なにより自信のなかったものをほめられたから。

「美咲さんほんと大好き!!あともう少しで冬休み終わっちゃうけど最後までよろしくね」

 美咲に妹がいたらこういう光景があるのだろうか。美咲も薫さんにこいうことをしたいのだろうか。許されるわけがないが、美咲もきっと甘えたい部分はあるのだとおもう。

「あと少しがんばりましょうか」

 そして優しく手をさえる美咲。本当に嫌なのかわからない。

「俺。皿洗ってくるわ」

 さすがにいごごちが悪くなってくる。この百合の可能性も考えられる二人の光景。その光景を見続けるのはさすがに限界である。

「お願いします」

 顔を赤くする美咲。さすがの美咲も俺に見られるのは恥ずかしいようだ。


「あの、っちょっと!」

 キッチンにいき食器を洗うのはいいものの二人が見えづらくなっただけで声は普通に聞こえてくる。

「いいでしょ!美咲さんって意外に」

 琴音のいつも以上に元気そうな声が聞こえてくる。聞こえてくる声から推測すると確実にいかがわしいことを琴音が一方的にやっている気がする。俺がいなくなったことは失敗だった気がする。新年早々何をやっているのだろうか。

「それなら」

 今度は美咲の声が聞こえてくる。

「っちょっと恥ずかしいから」

 琴音が嫌がる声が聞こえる。

「あなたが先に来たんですから抵抗しないでください!!」

 形成を逆転したようだ。今度は美咲が琴音に何をかをしかけている。ような声が聞こえるだけだから実際何をしてたかはわからない。

「りん兄にみられたらどうするんですか?」

 琴音が抵抗している音が聞こえる。俺に見られたらまずいことをしているのか。ダメだ気になってきてしまう。


「お前ら何を」

 少し顔を出した。するとさっきまで上にのり抱き着いてた琴音が美咲の膝抱っこをされている。加えて優しく抱きしめたり、頭を撫でたりされている。完全に姉に甘やかされている妹の光景だ。

「なにやってんだ」

 その光景に一気に冷めてしまいため息をだしながら聞いた。

「あなたの妹さんかわいいので。大人しくしたら小動物みたいにかわいいです」

 小動物その一言で大方何を言いたいかが理解した。美咲は小さいものガチ勢である。小さな鋳物になると目がないのだ。そして。いま、琴音が小動物みたいでかわいいといっている。つまり、琴音が美咲にとって小さくてかわいい認定されたのだ。そうなれば琴音であろうと美咲の魔の手から逃れることができないようだ。

「りんにい助けて」

 軽く涙を見せる琴音。まさか美咲ここまでになるとは予想していなかったのだろう。

「我慢しろ」

 俺はまたキッチンに戻り食器洗いをした。そのあと、琴音の悲鳴がやまなかったのはある意味新鮮で面白い光景だった。

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