第125話 ジェットコースター

 ジェットコースターに乗ることになった俺たち。美咲と木佐山は乗らず四人で乗ることになる。大和と上野。俺と双葉で並んでいる座っている。

「もう少しだよりんくん」

「おう」

 双葉はまさかの乗った瞬間に絶叫が嫌いであることがわかった。つまり、美咲がホラーアトラクションに乗ったときと同じ流れである。

 双葉は恐怖が渦巻いていた。彼女の手は冷たく、俺のの手をさらに強く握りしめた。

 ジェットコースターはガタガタと音を立てながらゆっくりと上昇し始めた。頂上に近づくにつれ、地面が遠ざかり、風が強くなる。女の心臓は早鐘のように打ち、息を詰まらせた。

「り、りんくん景色生きれだよー」

「そうだな。それより手震えてるぞ」

「演技だよもちろん」

 双葉は震えている。今から起こる落下への恐怖のせいで。

 頂上に達し、ジェットコースターは一瞬静止した。その瞬間、無限の落下が待ち受けていた。先頭にいる俺たちはその光景を誰よりも見えてしまっている。

「・・・」

 ついに双葉は黙り込んでしまう。目はしっかり明いているし手の震えは残っている。まだ意識は飛んでいないようだ。

「もうすぐ落ちるから」

「・・・」

 静かな方がまだましか。

 突然、ジェットコースターは急降下を始めた。風が俺らの顔を打ち、絶叫が周囲から響き渡った。

「りんくんやばい!!」

 双葉が握る手が強くなる。

「大丈夫だ」

 そんな双葉の手を俺も強く握る。

「ありがとう」

 さらにスピードが加速していく。何度も急上昇と急降下、旋回が繰り返される。次第に双葉の握る手の力が抜けていく。

「双葉!」

「りんくん。これやばい!!めっちゃ楽しい!!」

 風の中で双葉の悲鳴が興奮に変わっていく。双葉が恐怖を乗り越えジェットコースターを楽しんでいる。

「すっご」

 さらに俺の手を離し手を上にあげる。すごいなこいつ。ほんの数分前まであんなに恐怖にとらわれていたのに一周だけでここまで楽しめるなんて。

 

 ジェットコースターが駅に戻った。

「はぁたのしかったー!りんくんすっごく楽しかったまた乗ろ!!」

「お前。絶叫嫌いだったんだろ」

「いやーね。なれちゃったら結構面白かった」

 双葉は乗った当初とは真逆で満面の笑みをみせる。

「倫太郎。ちょっと先に行くわ」

 上野は意識が飛んでいる。いつも元気な大和がすごく静かである。大和が上野をかけてすぐに降りていく。

「上野君。大丈夫かな?」

「一歩間違えたらお前もあーなっていただろ」

「そうかな?」

 双葉はすごい。彼女は苦手なものと向き合うことで克服する強さがある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る