第110話 きえない少女

 ショッピングモールに着いた俺たち。双葉がアクセサリーを見たいということで雑貨屋に行った。ピンク色で広がる俺が確実に通らないような場所である。

「これとかどうべ」

 上野が緑の首飾りを見せてくる。

「これは、ちょっと明るすぎる」

 ほぼ見てないのに否定をされる。

「ならこれは!」

 再挑戦をする。今度は水色のブレスレットだ

「私に似合わなそう」

 またほとんどみていない。これは上野がセンスないと思って流しているな。

「なら」

 さらにこりず探す上野。

 

 その光景を大和は高みの見物をしている。

「お前が探してやれよ。絶対上野じゃ終わらないぞ」

「俺が言ったって面白くないだろ」

 なにそのあたかも自分は答えを知っているといわんばかりの余裕は。

 俺も少しばかりは探してみるか。

 三人から少し離れいろいろとみてみた。いろいろとあるもんだ。この青系、美咲にあうかもな。いやでも、美咲なら紫って感じだな。うーん悩む。

「りんくん。何探してるの?」

 急に双葉が俺の視界に入ってきた。

「お前に似合うやつあるか探してる」

 あぶな。とっさで美咲というところだった。こんなところで美咲の名前だしたら大混乱だろ。

「ほんと!待ってるね!」

 まずい。ちゃんと双葉に合うものを探してやらないと。

 双葉に合うのは美咲と違って明るめ。だが赤というよりはオレンジ。日の光のようなやつだよな。この花柄いいかもな。美咲は…


 あーもうだめだ。気をそらすために双葉たちと遊びにきているのになんかずっと美咲視点で考えてしまっている。今は双葉だ。双葉のためにかんがえるんだ。

「これとかどうだ?」

 オレンジいろの花のブレスレットを見つけた。

「これすごくいい」

 目を輝かせている。やはり日の明るさがこいつにはあっているな。

「双葉っちこれは?」

「だから。上野君はセンスない」

 はっきりといわれてしまった。

「まじかー。ショックだわー」

 上野が珍しく落ち込んだ。この光景を見るのも悪くないな。

「これ買ってくるね。そしたらフードコートいこ!」

「双葉っちめっちゃ喜んでたな。さすがりんたろうっち」

 上野が褒めてくる。うれしくもなんともない。

「お前はもっとその人の色くらいはわかってやれ」

「色かー。形でよくね」

 こういうところがダメなんだ上野。

「ちなみに大和さんなら何を選んでたんすか?」

「これとかかな」

 暗い青のネックレス。

「いやこれはないだろ」

「そうか。対比するものほどその人の個性を光らせるもんだけどな。同じだと足し算程度だろ」

 なんだそれ。名言すぎるだろ。ほんとうなのかは別として大和に言われると説得力があるものだ。

「おまたせーじゃぁいこっか」

 

「りんくんこれ」

 四人で歩いていると双葉が小声で話しかけてくる。手には俺が美咲のことを考えてみていた紫色の石の入ったチャームを手渡してくる。

「選んでくれたお礼」

  俺はすぐにポケットに入れた。美咲という存在はのろいかのように俺についてくるようだ。

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