第111話 夕食

「りんくんまたねー。今度は遊園地とか行こうね」

 フードコートで食事し楽しんでいた。いつもみたく椎崎が帰りを待っているわけでもないため時間を気にせずゆっくりすごした。そしてだいぶ暗い時間になっていた。俺がここまで遅くまでいるのもほとんどないから珍しい光景である。

 いつもどおり双葉と近くまで一緒に帰り途中でわかれる。双葉は今日も楽しめたようで満面な笑みで帰り去っていった。

 わかりきっていることではあるが家に帰ったら真っ暗が確定なんだよな。出迎える彼女はもういない。わかっていてもどこかまだ帰りを待っているんじゃないかと期待をいだくおれ。家にいたら双葉からもらったチャームをあげる。きっと喜んでもらえるだろう。

 そう思っていると俺もあいつらと同じことがわかる。立場が違えどなんやかんや美咲に好かれることを好んでいたのだろう。だからいざいなくなると考えてしまう。忘れたくても忘れられない。たった三ヶ月程度思えたのだからずっと見てきた木佐山たちも同じなのだろう。


 アパートにつき扉をひねる当然鍵がかかっているからあくことはない。久しぶりに自分でカギをあけた。

 部屋は暗い。彼女が本当にいないことを実感していく。何もない。当たり前だったのにこんなにもつらく感じるのか。

 電気をつけた。するとテーブルに何かが置かれていた。それはラップをかけられていた。魚料理だ。さらに紙が置いてある。

 冷めてると思うので温めて食べてください。

 随筆を見てすぐにわかった。美咲だ。おかしい。今のあいつが作るわけがない。なのになぜおいてあるんだ。

 

 とりあえず温めてテーブルに並べる。何が起こっているか理解なんてできないがとりあえず口に入れてみる。昨日まで当たり前に食べていた味が目の前にある。絶対にありえないと思えていたせいか懐かしくも感じる。


 すぐに食べ終える。いつもみたいに感想を聞く人はいない。これが本当に美咲が作ったのかはわからない。鍵は返されていない。だとしてもそれだけ料理を作るだろうか。あいつは俺を他人のように朝接してきていた。下の名前で呼んだらドン引きされ罵られた。そんな奴がわざわざ料理を作るわけがない。目の前に広がる料理は真実なのか。記憶がないわけでなくただ封じられてるだけなのだろうか。

 悩めば悩むほどいろいろ理由が思い浮かぶがしっくりくるものは何もない。わけがわからない。

 明日早く帰るか。それでもし美咲がきたら理由を聞こう。ばれればはかないにしても表情は変わるだろうし。

 俺はただ美咲が元に戻るならなんでもいい。

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