第115話 命令操作
「それでは私は」
食事を終えたとたん逃げるかのように家をでていった。
「やっと帰った。なんで余計なこと言うの」
薫さんが力を抜いた。まるでダメ姉のように堕落した様子だ。
「薫さんもそんな感じになるんですね」
「いいでしょ。普段の立ち振る舞いから解放される時間が必要なの」
「それで俺でいいんですか?」
「君はいずれわたしの隣で共存する存在」
共存?何をいっているのだろうか。
「それが本題ですか?」
「そういうこと」
美咲の真実。そこに眠る共存の真実。
「君はやってしまった。母に認められる器を手にした」
認められる器?薫さんのぴりついた表情からしてまずいところに入ってしまった気がする。
「俺はそんなものもってませんよ」
「さっき私の命令をそむき君の命令に従った。これが全てだよ」
やはりあれはたまたまでないようだ。俺の命令?おれはただお願いをしただけだ。
「何より私の記憶消去プログラムを壊した」
薫さんのいうこと。理解はできないが状況はつかめた。あの日、美咲は記憶が消える直前この事態に気づいていた。だから俺の前で最後の挨拶をしてきた。
「きっかけはテストですか?」
「そういうこと。私は彼女に不可能な二種類の条件をつくった。そしてそれを塗り替えるために倫太郎くんから一番になるように命令をもらえばクリアできた。だけどうまくいかなかったんだろうね」
美咲は一番にこだわる会話をしていた。俺に塗り替えさせるためだったのか。つまり俺が美咲の思いを読み取ることができなかった。だんだんとつながる。
「その記憶削除プログラムとは」
「あの子を無にする。余計な記憶はすべて消す。必要な情報と関係以外は消す。もちろん君対する記憶はすべてを削除した」
大体の予想は当たっている。だとしとたら。
「料理だけは許可したと」
「それが問題なんだよ。君は私の命令を破壊し新たな秩序をつくた。そのせいであれは君の記憶がないのに料理だけはするようになった。どんな命令したかはわからないけどね」
あきれられている。それほど俺がしことは大きくなことだったのだろう。だが俺はそんな命令をしたきおくがない。なのになぜだ。美咲は俺のどの言葉を聞き入れたというのだ。
「信じがたい事実ですね」
「私もよ。何人か邪魔者はいたけど削除の塗り替えをするひとはいなかった。君はほんとにイレギュラー。そして、美咲ちゃんを誘導できる2人目の存在。私と並ぶ人間が現れた。母は椎崎美咲という個体に興味をなくした。命令に従順な傀儡人形程度にしか思われていない。今母が興味をもっているのは倫太郎君」
巻き込まれたということか。椎崎美咲のせいで。この家族の中に。
「そこで共存の交渉がこちらの条件、つまり私に尽くす約束をのめばすぐに美咲ちゃんの記憶は返してあげる」
薫さんにつくす。そうすれば美咲が元に戻るか。これは交渉の余地がうまれたようだな。
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