第63話 距離感の戦い
俺、大和、上野で実行委員の会議のある部屋に入った。もうほとんどの人がそろっていた。
木佐山も椎崎もいる。
「俺らはここ座るか」
席に着く。
「なんでこの並びなんだ」
大和、俺、上野で座った。普通どちらとも仲良いい大和が真ん中だろ。
「理由なんて関係ないぜ倫太郎君。仲良くいこうぜ」
「なるほどなお、おっけー」
軽く引いてしまった。優しくいって純粋。厳しくいってちょううざい。
「みんな集まったようだしはじめよっか。私は今回の実行委員長の三年二組の永島出雲です。よろしくね」
一目見ただけでちゃんとした先輩だとわかる。行事を全力で楽しむ性格を持ちながらも真面目なところではしっかりできる優秀生徒なのだろう。
「それじゃ。みんな自己紹介よろしく。時計周りにしようか」
一人一人自己紹介を進めていく。
「椎崎美咲です。先輩がたに迷惑かけず、貢献できるよう精一杯がんばります。よろしくお願いします」
安定のいいひとムーブを見せる。先輩からも一気に期待が上がる。
「木佐山桜ですお願いします」
すごく緊張したようです。声が小さくよく聞こえていない。はやくちで顔も下を向いている。やはりこういう場には向かない人物だったか。なんで木佐山は立候補したのだろうか。
「紅大和です。よろしくお願いします」
大和としてはごく普通の挨拶だな。まぁ大和が自分から目立つようなするタイプでないかららしいっちゃらしいか。
「草加倫太郎。よろしくお願いします」
俺は速攻で自己紹介を終わらせた。
「上野陽太っす。一生懸命がんばりますんでじゃんじゃん仕事をください!俺動きますよ。よろしくっす!」
先輩にも屈することなく自分のキャラであいさつをやりきった。こいつ生半可な気持ちでこのキャラ保ってないな。逆に尊敬してしまうわ。
「よし。これで全員やったね。今年はキャラ濃いし面白くなりそうみんなはりきっていこうね!!」
今日は挨拶だけで詳しい分担は明日決めるといった。自分たちがやりたいものをやるのではなく今日の挨拶から委員長が独断と偏見で決めるらしい。自分から選ばないのであれば椎崎や大和と絡むことができないのはなんか許せんが仕方ないか。裏で手伝ってもらえばいいか。
「倫太郎っち。今日暇だろ」
陽太の呼び方がくんづけから○○っち呼びに退化した。こいつと仲良くなるのはまぎれもなく退化だ。
「暇だけど」
「なら一緒に帰っべ」
「…やだ」
「ひっでーな。こんな仲良くなったのによ」
いつ俺はそんな仲良くなったよ。
「いいじゃないか。俺も付き合うからさ」
大和も一緒に来ることになった。これで俺が回避する方法はなくなる。
「わかったよ」
ここ最近こればっかだな。
「紅君」
帰ろうとすると知っているなれた声が聞こえてきた。
「どうした?」
「この間はありがとうございました」
熱のことについてお礼をいってきた。俺に接触してきたわけでなかったのか。
「気にしてないさ。回復してよかったよ」
「あなたとは初めてですね」
あ、終わった。これが一般的に初となる椎崎の会話か。
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